肥育牛におけるビタミンAの制御の時期とビタミンA給与量
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要約
黒毛和種去勢牛の16カ月齢の血漿中ビタミンA濃度が80IU/dl以下の場合は、それ以降ビタミンAを制御すれば、肉質向上が期待できる。制御にあたり飼料摂取量を低下させないためにはビタミンAを体重1kg当たり20IU以上給与しなければならない。
- 担当:畜産試験場 栄養部 栄養素配分調節研究室
- 連絡先:0298(38)8658
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:肉用牛
- 分類:指導
背景・ねらい
肉用牛飼養において適切な栄養管理による肉質制御についての要望が極めて高い。ビタミンA給与を肥育の一定期間制限すると、牛肉の脂肪交雑と肉色の評価が 良くなることが知られている。ビタミンAの制御法としては、肥育開始時はビタミンAを給与し、肥育中期はビタミンAを制限し、肥育後期にはビタミンAを給 与する方法がとられているが、その時期と量的な関係は明確にされていない。ビタミンAの最低必要量(臨床的欠乏にならない)と保健量(潜在的欠乏にならな い)を求め、肉質を重視する場合と肉量を重視する場合のビタミンAの給与量を提示する。
成果の内容・特徴
- 同一種雄牛の子(去勢牛 54頭)を4段階のビタミンA給与水準で肥育し、各月齢の血漿中ビタミンA濃度と枝肉の脂肪交雑 (BMS)の関係を調べた結果、16ヶ月齢のビタミンA濃度が80IU/dl以下の牛のBMSは6以上であったが、80IU/dl以上の牛のBMSは低 かった( 図1 )。この時期にビタミンA濃度が80IU/dl以下の場合、肝臓中にビタミンAの蓄積が少ないので以後の制御が可能である。
- 肥育中期と後期に必要なビタミンA量を検討するために、血漿中ビタミンA濃度が高いA区(3頭)とビタミンA濃度が低いB区 (3頭)の牛に、トウモロコシ15%を含有する濃厚飼料とイナワラ(85:15)と体重1kg当たり20IUあるいは30IUのビタミンAを給与して、血 漿中ビタミンAを測定した。給与量が体重1kg当たり20IUでは、ビタミンA濃度は上昇せず、ビタミンA欠乏症になる可能性があった。給与量を30IU にするとビタミンA濃度は上昇した( 図2 )。
- ビタミンA無添加飼料を給与した牛(4頭)で、血漿中ビタミンA濃度と飼料摂取量の関係を検討した。ビタミンA濃度が15IU/dl以下になると、濃厚飼料の摂取量が急激に低下したが、ビタミンAを給与するとビタミンA濃度が上昇し、濃厚飼料の摂取量が回復した( 図3 )。
成果の活用面・留意点
- 血漿中ビタミンAが80IU/dl以上の場合は、肝臓中のビタミンA蓄積量が多いのでビタミンAを制御しにくい。肉質をめざすよりは枝肉重量の増加を考えて、ビタミンAを制限しない方がよい。
- 飼料摂取量が急激に低下する血漿中ビタミンA濃度は系統によって違いがあり、日増体量の大きい牛は15IU/dl以上の場合もある。
- 夏期は血漿中ビタミンA濃度が低下しやすいので注意する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:肉牛肥育における飼料エネルギ-の利用特性と内分泌による制御機構の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成7年-11年)
- 研究担当者:甫立京子・阿部啓之・河北由美・宮重俊一
- 発表論文等:
1.環肉牛の栄養学・最新の話題、獣医畜産新報、52、221-224、1999.
2.肥育牛におけるビタミンA制御による肉質改善、肉用牛研究会報、67、22-28、
3.Influence of dietary vitamin A restriction on growth performance,