ルーメン内非分解性蛋白質の適正給与による泌乳牛からの窒素排泄量の低減
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要約
給与飼料中の粗蛋白質の過剰給与を抑制し、ルーメン内非分解性蛋白質飼料を適正に用いることにより、泌乳牛からの窒素排泄量を削減することができる。
- 担当:畜産試験場栄養部 反すう家畜代謝研究室
- 連絡先:0298(38)8655
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:乳用牛
- 分類:指導
背景・ねらい
泌乳牛は1頭あたりの窒素排泄量が多く、年間では80~90kgにも達するとされている。また、最近は酪農経営における1戸あたりの飼養頭数が増加
しているにもかかわらず、1戸あたりの飼料作面積は横ばいであることから、蛋白質栄養の適正化による泌乳牛からの総窒素排泄量抑制技術を開発する必要があ
る。
成果の内容・特徴
- 乳量25kg/日程度の泌乳牛29頭の窒素(N)出納試験成績を用いて、給与飼料中の粗蛋白質(CP)含量とN排泄量の関係を検討した。その結果、CP含量が増加すると、尿中N排泄量は直線的に増加することが明らかとなった(
図1
)。
- 泌乳最盛期および中後期の泌乳牛を用いて給与飼料中の非分解性蛋白質(CPu)含量の違いがN排泄量に及ぼす影響を検討したところ、CPu含量を高めることによって、糞中排泄量に違いは認められないものの、尿中窒素排泄量は1割程度低減できた(
図2
、
3
)。
- これらのことから、日本飼養標準にしたがって、蛋白質給与量の過剰給与を抑制し、その分解性を適正に設定することによって尿中窒素排泄量は大幅に削減できる。
成果の活用面・留意点
- 本技術を有効に活用するためには、蛋白質分解率の簡易な測定手法を開発することが必要である。
- 適正な栄養管理を実現するためには給与飼料中のCP含量を把握することが重要であり、特に、粗飼料は品質の変動が激しいことから、自給飼料診断事業などの活用が望まれる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:栄養素の動態制御による牛の窒素排泄量の低減技術の開発
- 予算区分:環境研究[家畜排泄物]
- 研究期間:平9~11年度
- 研究担当者:寺田文典・栗原光規・西田武弘・永西 修・田鎖直澄
- 発表論文等:
1.泌乳牛における窒素排泄量の推定、日畜会報、68(2):163-168. 1997.
2.泌乳牛の窒素排泄量に及ぼす魚粉給与と環境温度の影響、日畜会報、69(6):620-624、1998.
3.飼料タンパク質の分解率の違いが泌乳牛の窒素およびエネルギー出納に及ぼす影響、日畜会報、70(10):J390-J396、1999.