卵白オポムコイド部分ペプチドの経口投与による免疫応答の抑制

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要約

卵白アレルゲン・オポムコイド(OVM)の特定領域の部分ペプチドをマウスに経口投与することにより経ロ免疫寛容が誘導される。特にOVMの 163-177残基目に相当するペプチドは、OVMの免疫に先立つ経ロ投与により、リンパ節由来T細胞からの抑制性サイトカインの産生を冗遣し、OVmm特 異的抗体応答を抑制するユニークなペプチドである。

  • 担当:畜産試験場・加工部・畜産物機能開発研究室
  • 連絡先:0298(38)8687
  • 部会名:畜産・食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:ニワトリ
  • 分類:研究

背景・ねらい

経口免疫寛容誘導現象を利用した過剰免疫応答の抑制方法は、アレルギー、自己免疫疾患等の積極的な予防・治療法として期待されている。特に、タンパク 質の部分ペプチドを利用する方法は、タンパク質そのものの投与で発症する食物アレルギーにおいては、抗体の関与する免疫応答を起こすことなく、免疫応答を 制御することが期待できる。そこで、本研究では鶏卵アレルゲンのオポムコイド(0冊)について、そのT細胞エピトープに相当するペプチドの経口免疫寛容誘 導活性について抗体応答及ぴT細胞応答の両面から調べ、その有効性を検討する。

成果の内容・特徴

  • OVMのT細胞エピトープを含むペプチドOVM100-114,OVM157-171及びOVM163477のうち、OVM163-177を経口投与したときにのみOVMに対する抗体応答が抑制された( 図1 )。
  • OVM100-114及びOVM57-171の経口投与により、OVMに対するT細胞増殖応答は顕著に抑制された。一方、抗体応答抑制効果が認められたOVM63-177の経口投与によるT細胞増殖応答抑制は軽度であった( 図2 )。
  • 0VM163-177を経口投与したマウスのリンパ節細胞培養上清中のサイトカイン量を測定した結果、OVM100-114 とOVM57-171の経口投与では抑制されたIL-4及びIL-10量の産生亢進が認められた。また、リンパ節細胞のサイトカイン皿RNAの発現を RT-PCRにより調べた結果、TGF一βの強い発現が認められた( 表1 )。
  • 以上のことから、OVM163-177の経口投与ではIL-4、IL-10、TGF一βなどの抑制性サイトカインの産生が亢進し、これによって全身のOVM特異的抗体応答が抑制されたと考えられる。

成果の活用面・留意点

ペプチドの構造と経口免疫寛容誘導活性との関係の法則性を明らかにすることができれば、ヒト食物アレルギーの予防・治療法への応用が期待される。そのためには、患者の認識するT細胞エピトープを解明し、効果的に経口免疫寛容を誘導するための投与条件も確立する必要がある。

具体的データ

図1 OVMペプチド経口投与による抗体応答抑制効果

 

図2 OVM163-177経口投与によるOVMに対するT細胞増殖応答の抑制

 

 

表1 OVMペプチド投与マウスの免疫応答抑制効果のまとめ

 

その他

  • 研究課題名:食物タンパク質に対する過剰免疫応答抑制方法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平11年度(平8~10年度)
  • 研究担当者:水町功子、栗崎純一(現食品総合研究所)
  • 発表論文等:
    1.Induction of tolerance to ovommcoid in mice by oral administration of peptides containing dominant T-cell epitope regions. 25th FEBS Meeting.P134(1998)
    2.オボムコイドの部分ペプチドOVM163-177の経口投与による免疫寛容誘導機構の解析 第29回日本免疫学会総会・学術集会講演要旨 p173(1999)