烏骨鶏の体内における黒色色素の組織特異的な分布

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要約

烏骨鶏は骨の表面や内臓に色素沈着が見られる、稀なニワトリの一品種である。この黒色色素の組織からの抽出法および定量法を確立した。その方法を基に、赤外吸収スペクトルによる解析の結果から烏骨鶏の体内における色素をメラニンと同定した。さらに色素の分布が神経堤に由来する組織に特異的であることを明ら かにした。

  • 担当:畜産試験場 加工部 食肉特性研究室
  • 連絡先:0298(38)8686
  • 部会名:畜産・食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:鶏
  • 分類:研究

背景・ねらい

烏骨鶏は、体内に色素の沈着が起こるという特異な形質を有する鶏の品種である。ふつう、高等動物ではこのような現象は極めて稀であり、生物学的にとても興 味深く、解明の意義が大きい。烏骨鶏においては色素細胞の発生を支配するメカニズムに異常が存在するものと考えられている。また、色素自体の生成機構に異 常が存在する可能性も考えられる。しかし、この原因の詳細については、ほとんど未解明であるのが現状である。 今回、我々は烏骨鶏のいくつかの部位から黒色色素を抽出し、色素分子の性質がどんなものであるか調べた。さらに、分布の特異性が見いだせれば、体内にお ける色素の異常な分布を解析する有力な手掛かりになると考えられた。そこで、色素の定量法を確立し、体内で色素沈着が見られる部位を中心に、いくつかの部 位について色素含量を分析した。

成果の内容・特徴

  • 黒色色素を烏骨鶏体内の各部位から抽出し、定量する方法を確立した。
  • 抽出した色素を赤外吸収スペクトルにより分析し、メラニンであることを同定した。また、羽根、骨膜に含まれるものは、分子種が同一であることも確認した( 図1 )。
  • 確立した定量法により、各部位における色素の定量を行ったところ、骨膜、生殖巣、気管、盲腸の順で多く含まれていることがわかった( 表1 )。さらに、頭部の解剖で得られた分布様式の結果を考え合わせると、神経堤由来組織に特異的であることが明らかになった。すなわち、 烏骨鶏の体内における色素沈着の一因として、神経堤細胞自身に異常があることが示唆された。

成果の活用面・留意点

本成果は、烏骨鶏の色素細胞の異常な発生に、初期胚の神経堤細胞の性質が影響する可能性を示している。この事実は、色素細胞の移動、定着、増殖、分化のメカニズムをより詳細に解明するための有力な手掛かりとなる。

具体的データ

図1 烏骨鶏筋肉からの色素の抽出および定量法

 

図2 烏骨鶏黒色色素の赤外線吸収スペクトル

 

表1 烏骨鶏の体内各部位の色素含量

 

その他

  • 研究課題名:烏骨鶏における特性成分の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成7~11年度)
  • 研究担当者:室谷進、田邊亮一、中島郁世、千国幸一
  • 発表論文等:
    1.環肉牛の栄養学・最新の話題、獣医畜産新報、52、221-224、1999.
    2.肥育牛におけるビタミンA制御による肉質改善、肉用牛研究会報、67、22-28、
    3.Muroya, S. et al., Molecular characteristics and site specific distribution of the pigment of the Silky fowl. J.Vet.Med.Sci., 62, 2000 (in press)