屋根形状と風向角の違いによるフリーストール牛舎の気流分布
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要約
屋根形状のうちオープンリッジ型はセミモニター、片流れ型と比較し、舎内、後流の気流速が大きく、最も後流の運動エネルギーが大きいため、舎内汚染物質
の舎外での輸送能力が高い。一方、片流れ型は最も小さい。舎内気流で風向角の影響を最も受けるのはセミモニター型である。
- 担当:畜産試験場・飼養環境部・施設研究室
- 連絡先:0298(38)8678
- 部会名:畜産
- 専門:農業施設
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
開放型畜舎内で発生した臭気ガスは換気、すなわち舎外から舎内へ流入した気流によって舎内で拡散し、舎外へ排出され悪臭問題の原因となっている。畜舎内外
気流によって汚染物質は輸送されるが、これは屋根形状、側壁開口位置、面積等の換気構造と風向角によって影響される。したがって、畜舎内外臭気ガスの拡散
性状を把握するにはまず、畜舎の屋根形状、風向角に影響される舎内外の気流分布を明らかにすること、舎内の空気を入れ換えるため換気を促進する際に、換気
構造によっては、排出気流が後流によってより輸送されることもあるので、換気構造と気流分布との関係を知ることが必要である。そこで、開放型フリーストール牛舎を[対象]とし牛舎の屋根形状、風向角と気流分布との関係を風洞実験によって明らかにする。
成果の内容・特徴
- 舎内気流が最も小さくなるのは片流れ型であり、風向角の影響を最も受けるのは、セミモニター型である。後流の気流速が最も大きいのは、オープンリッジである。風向角が畜舎の長手方向に平行になるに従い、すべての屋根形状で舎内、後流の気流速は小さくなる傾向を示した。
- 後流の領域における空間平均の平均流の運動エネルギーはオープンリッジ型が最も大きく、汚染物質を輸送するエネルギーが大きいことを示した(
図1
)。片流れは最も小さくなった。風向角は畜舎の長手方向と直角となる場合が最も汚染物質を拡散しやすい。
- 後流の風下方向の長さは、オープンリッジ型、セミモニター型、片流れ型の順で長くなることから(
図2
)、オープンリッジ型では乱流によって汚染物質が拡散しやすい。また逆の順に鉛直方向での後流の範囲が大きくなる。言い換えれば、セミモニター型、片流れ型のほうが畜舎より遠方に汚染物質を移流する可能性がある。
成果の活用面・留意点
- 立地における主風向に対して汚染物質を拡散しにくい屋根形状や畜舎方位を検討する資料として活用できる。
- 実験で得られた風向角、屋根形状毎の気流ベクトル分布は、畜舎内環境制御や畜舎設計時の基礎的資料となる。
- 屋根の庇の長さ、ストール配置やカーテンの使用によって気流分布が異なることがある。
- 換気のみの制御だけでは、十分に汚染物質の拡散を防ぐことはできない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:開放型畜舎からの物質拡散にかかわる気流分布
- 研究期間:平成11年度(平成9年~11年)
- 研究担当者:池口厚男、長谷川三喜、本田善文
- 発表論文等:
Atsuo Ikeguchi and Limi Okushima.Wind Tunnel Testsof Roof Shape and Wind Direction Effects on Inside and Outside Airflow Patterns of Open-Type Free-stall Houses. The 2000 ASAE international annual Meeting 414(9-12 July 2000. Wisconsin USA)