朝あるいは夕乳による1日乳量および成分の予測
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要約
乳用牛群能力検定事業(牛群検定)を簡素化するために、交互検定法により、朝乳あるいは夕乳から1日乳量および乳成分を予測する係数の策定と検証を
行った。1日乳量は朝あるいは夕乳から実用的な精度で予測可能である。乳蛋白率、無脂固形分率は朝あるいは夕乳の成分が1日成分を代表していることから補
正は不要である。
- 担当:畜産試験場飼養環境部飼養システム研究室
- 連絡先:0298(38)8679
- 部会名:畜産
- 専門:情報
- 対象:乳用牛
- 分類:行政
背景・ねらい
現在、乳用牛群能力検定事業(牛群検定)では、検定員が農家に出向き、検定日の夕方に乳量および乳成分の測定を行い、さらに次の朝にもう一度測定を行い、
夕および朝の2回の測定を行って当該月の検定成績としている。2日間にわたって測定を行うことから多くの時間と経費を要している。2回の測定を1回のデー
タで代表させることができれば検定の簡素化が可能となるので、これまで米国あるいはカナダにおいて研究が続けられてきた。この手法は交互検定法、AT法な
どと呼ばれているが、国内ではこれまでほとんど検討されていなかった。この研究では牛群検定の簡素化の一手法として位置づけ、実用化のための係数の策定と
検証を行った。
成果の内容・特徴
- 朝あるいは夕乳から1日乳量および乳成分を予測するための係数を
DM/PM:1日乳量/夕乳量 DM/AM:1日乳量/朝乳量
DF/PM:1日平均乳脂率/夕乳脂率 DF/AM:1日平均乳脂率/朝乳脂率
DP/PM:1日平均乳蛋白率/夕蛋白率 DP/AM:1日平均乳蛋白率/朝蛋白率
DS/PM:1日平均無脂固形分率/夕無脂固形分率 DS/AM:1日平均無脂固形分率/朝無脂固形分率
とした。これらの係数を目的変数とし、それぞれ検定月、産次、搾乳日数、搾乳間隔を独立変数とする分散分析を行った。搾乳間隔は、夕乳については朝から夕
まで、朝乳については夕から朝までの間隔とした。データは1992から1998年の都府県の牛群検定データ372,410件を用いた。
- 1日乳量を予測するための係数(DM/PM,DM/AM)に影響を及ぼす要因のなかで搾乳間隔の効果が最も重要であり(
図1
)、検定月の効果がこれに次ぐ結果となった。すべての効果を考慮した検証の結果1日乳量の予測誤差は大部分で2kg以内1)となったことから、条件を付けた実用が可能である。
3.
- 乳量予測の場合と同様に、1日平均乳脂率を予測するための係数(DF/PM,DF/AM)に影響を及ぼす変動要因のなかで搾乳間隔が最も重要であった(
図2
)。検証の結果、一部で予測誤差が0.3%を超える場合もあったことから、乳脂率については予測精度を向上させるための検討が必要である。
- 乳蛋白率および無脂固形分率について、DP/PM,DP/AM,DS/PM,DS/AM等の係数の推定値は常に1.0に近く、検証における予測精度が高かったことから、係数による補正の必要はない。
成果の活用面・留意点
- 予測された1日乳量は誤差を含むことから、実測の1日乳量と区別する必要がある。
- 1日平均乳脂率の予測精度がやや低いことから、予測された乳脂率の利用には注意を要する。
- 搾乳間隔の測定について、第3者による朝および夕の搾乳時刻の記録が必要となる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:酪農シミュレータの開発
- 予算区分:経常
- 研究期間:完(平8~10~11年度)
- 研究担当者:林 孝・島田和宏・竹中洋一
- 発表論文等:Hayashi T. and Aihara M. A prediction of daily milk yield and its compositions from the morning or the evening milking records. Animal Science Journal 70(4), 181-187, 1999.