集約放牧下における搾乳牛の血液中尿素窒素の動態

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要約

集約放牧で飼養されている控乳牛の血液中尿毒窒素は、放牧期間を通じて高く、放牧草の摂取割合の高い群の方が高い傾向があった。放牧草の粗蛋白質含量は 高く、要求量に対して摂取量が上回ることが多く、CPの過剰摂取によるTDN/CPのアンバランスが大きな一因と考えられる。

  • 担当:草地試験場 放牧利用部 放牧飼養研究室
  • 連絡先:0287-37-7809
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

集約的な放牧で飼養されている搾乳牛では血液や牛乳中の尿素窒素が舎飼いの牛に比べて高い傾向があることが指摘されている。血液中の尿素窒素(BUN) が高いことは、栄養バランスが崩れていることを意味しており、特に乳牛では、肝臓への負担や繁殖障害との関連も示唆されており好ましくない。そこで、集約 放牧で飼養されている搾乳牛のBUNの動態と栄養状態の関連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 1994年から4年間、ペレニアルライグラス優占草地を用いて3頭/1.1ha(低放牧圧区)、3頭/0.65ha(高 放牧圧区)、6頭/1.75ha(中放牧圧区)で集約放牧している搾乳牛の放牧期間中のBUNの動態を調べる。また、放牧草と補助飼料の粗蛋白質(CP) 含量、人工消化率から推定したTDN含量および採食量から、放牧期間中の乳牛の栄養状態を解析し、BUNとの関連を求める。 2.
  • 放牧期間中、搾乳牛のBUNは、舎飼いの牛の標準値である14~16mg/dlを越える高い値で推移し、20mg/dlを上回る時もある。採食量に占める放牧草の割合が高い低放牧圧区の方が、やや高い傾向がある( 図1 )。 3.
  • 放牧草のCP含量は15~25%と放牧期間を通じて高く、乳牛用の配合飼料(TDN75%、DCP15%)を供給するとCP要求量に対して摂取量が大きく上回る。BUNはCP充足比と正の、摂取飼料のTDN/CP比と負の有意な相関がある( 表1 )。しかし、各年次の群毎にその関係を見ると、CP充足比は1群のみで、TDN/CP比は3群でしか有意な相関が認められない。放牧牛でのBUNの高い値は、CPの過剰摂取によるTDNとのCPのバランスが崩れることが大きな一因と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 集約放牧の搾乳牛を適切に栄養管理するための基礎知見となる。
  • 摂取飼料に占める放牧草と貯蔵草の割合が50%以上である集約放牧下の搾乳牛の結果である。

具体的データ

図1 各年次における搾乳牛のBUNの推移

 

表1 搾乳牛の栄養状態とBUNとの相関

 

その他

  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成9年~10年)
  • 研究担当者:栂村恭子、大槻和夫
  • 発表論文等:集約放牧における搾乳牛の血液中尿素窒素の動態、第94回日本畜産学会講演要旨集.1998