とうもろこし育種試験における雌穂栄養価の評価法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

とうもろこし雌穂の栄養価は穂軸 TDN含量と雌穂中の子実重割合で評価できる。多数の系統を一次評価する場合には、穂軸TDN含量を45.3%として、子実重割合のみで雌穂の栄養価を概略的に評価することもできる。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・飼料作物育種研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:育 種
  • 専門:育 種
  • 対象:飼料作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

とうもろこし育種試験では、茎葉および雌穂の栄養価には品種間差がないことを前提にホール クロップの栄養価を評価してきた。最近、部位別の栄養価の品種・ 系統間差を考慮した品種改良が進められ、茎葉の栄養価については酵素分析などによる評価が 行われるようになったが、品種・系統間差が茎葉より小さいと想定 される雌穂については、栄養価の品種・系統間差はほとんど検討されていない。そこで、穂軸 の栄養価と雌穂中の子実重割合の品種・系統間差を明らかにし、雌 穂の栄養価を評価する方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 本評価法は、乾燥した雌穂を穂軸と子実に分け、子実については日本標準飼料成分表のT DN含量、穂軸については酵素分析による推定値を用い、次式で雌穂TDN含量を評価する方 法である。 雌穂TDN含量 = 0.923×子実重割合+穂軸TDN含量/100×(100-子実重割合)
  • 穂軸のTDN含量と子実重割合には、それぞれ11.8%および7.5%の有意な品種・系 統間差があり、その結果、雌穂のTDN含量には4.6%の有意な品種・系統間差が認められる

    (表1) 。

  • 穂軸TDN含量と茎葉TDN含量の間には相関が認められないため、穂軸TDN含量は茎葉 TDN含量とは別に調査する必要がある

    (表2) 。

  • 穂軸TDN含量を供試8品種・系統の平均値(45.3%)として算出した値と酵素分析値 によって推定した場合との差異は、雌穂 で最大1.8%、ホールクロップで最大0.9%である。従って、多数の系統を一次評価する場合に は、穂軸TDN含量を45.3%として、子実重割合のみで 雌穂の栄養価を概略的に評価できる

    (表3) 。

成果の活用面・留意点

  • これまでの茎葉栄養価の評価法とあわせて利用することにより、育種試験でのホールクロ ップの栄養価の評価が可能になる。
  • 本法は雌穂栄養価の品種・系統間差異についての相対的な評価法である。

具体的データ

表1 TDN含量の推定値に見られる品種・系統間差異

表2 穂軸TDN含量と関連形質間の相関

表3 穂軸の酵素分析の有無による穂軸およびホールクロップの推定TDN含量の差

その他

  • 予算区分 :作物対応研究[転作作物]
  • 研究期間 :平成11年度(平成9年~11年)
  • 研究担当者:伊東栄作、池谷文夫、濃沼圭一、江口研太郎
  • 発表論文等:サイレージ用トウモロコシの雌穂消化性についての品種・系統間差異とその 簡易推定法、九州農業研究、2000。