えん麦における種子の一次休眠に関する品種間差と検定法

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要約

えん麦種子の一次休眠の深さには品種間差があり、その覚醒程度は20°Cと30°Cの発 芽試験によって検定できる。種子の保存期間は長い方が、保存温度は高い方が、発芽率の向上 に効果的である。

  • 担当:九州農業試験場 草地部牧草育種研究室・上席研究官
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:育種
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

えん麦の夏播き試験で当年の春に生産した種子や市販種子を用いた場合、いくつかの品種で発 芽の遅れが観察された。これまでの研究によって、採種後数ヶ月は 30°Cでの発芽率に顕著な品種間差が観察され、30°Cでの発芽率が極不良なものは、夏播き試験 での発芽も不安定であることが認められた。これらは一次休眠 の覚醒程度が不十分であることが一因であると考えられた。また、日本のえん麦品種の一次休 眠に関する情報は少ない。そこで、一次休眠に関する品種間差とそ の検定法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 一次休眠覚醒が進んだえん麦種子は、20°Cおよび30°Cでの発芽率が置床後3日目で80%以 上に達する。したがって、一次休眠の覚醒程度を検定するための発芽試験は3日間の調査で十 分である。

    (表1)

  • 種子の保存温度は一次休眠の覚醒に影響し、高温(30°C)で保存する方が発芽率の 向上に効果的である。

    (表2)

  • 種子の保存期間も一次休眠の覚醒に影響し、長く保存する方が発芽率の向上に効果 的である。

    (図1)

  • 接種後、30°Cで7週間保存すると、20°Cでの発芽率は全供試品種で80%以上に達する が、30°Cでの発芽率が約80%に達しているのは、「はえいぶき」のみであり、日向改良黒では 30°Cでの種子の保存期間が25週間必要である。

    (図1)

  • 種子の保存期間によっては、20°Cでの発芽率が80%以上でも30%での発芽率が80%に達 しない品種があり、一次休眠の覚醒程度を検討するには30°Cでの発芽試験が必要である(

    (図1) 。

  • 以上の点から、20°Cおよび30°Cでの3日間の発芽率を調べることによって、一次休 眠の覚醒程度を検定でき、さらに種子の保存期間をそろえることによって、品種間差を検定で きる。

成果の活用面・留意点

  • 夏播き用品種の育種過程における休眠性に関する選抜や、採種後の種子管理に活用できる 。
  • 保存期間別等の発芽試験では、処理終了時点での種子休眠状態を維持するためには 、種子を-20°Cで保存する必要がある。

具体的データ

表1 一時休眠覚醒が進んだ種子の20°C及び30°Cでの発芽率の推移

表2 種子の保存温度が20度及び30度での3日間の発芽率に及ぼす影響

図1 30°Cでの種子保存期間が20°C及び30°Cでの3日間の発芽率に及ぼす影響

その他

  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成7年~11年)
  • 研究担当者:桂真昭、松浦正宏、長谷健、上山泰史、
  • 発表論文等:夏播き用えん麦の高温発芽性の品種間異について、日草九支訪、28巻1号、 1998.;Summer-sown cultivation of forage oats and breeding in Japan,LARQ,33巻1号、 1999.