エンドファイト感染したペレニアルライグラスの耐病性の向上

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要約

エンドファイト感染株からトリホリン剤を用いて非感染株を作出する方法を開発し た。ペレニアルライグラスはエンドファイト感染により数種の病原菌に抵抗性が強くなり、耐 病性の向上が認められた。

  • 担当:草地試験場・環境部・作物病害研究室
  • 連絡先:0287-37-7556
  • 部会名:生産管理
  • 専門:作物病害
  • 対象:牧 草 類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

エンドファイト感染植物は耐虫性や耐乾性が向上するすることが知られているが、耐病性への 影響については必ずしも明らかとなっていない。ここでは殺菌剤に より感染株からエンドファイトを除去した非感染株を作出する方法を開発するとともに感染、 非感染株間の比較から、エンドファイト感染が病害抵抗性へどのよ うな影響を与えるか明らかにしようとした。

成果の内容・特徴

  • 感染株から非感染株の作出法

    (図1) 遺伝的背景が同一の供試試材料を得るために、感染株を株分けし、浸透性殺菌剤(トリホリ ン剤)の100倍溶液に15~24時間浸漬する。その後ポットに 移植し、葉鞘裏面組織の表皮細胞の顕微鏡観察、植物組織からのエンドファイトの分離等によ りエンドファイト非感染を確認する。

  • 供試病原菌、接種法および抵抗性程度の判定 同一株由来のエンドファイト感染及び非感染ペレニアルライグラスの切離葉に各種病原菌を 人工接種した。接種に用いた病原菌は、かさ枯病菌 (Pseudomonas syringae pv. atropurpurea)、夏斑点病菌(Bipolaris sorokiniana)、網斑病菌(Drechslera dictyoides)、いもち病菌(Pyricularia oryzae)、株腐病菌(2核Rhizoctonia AG-D)、炭疽病菌(Colletotricum graminicola)、葉腐病菌(Rhizoctonia solani AG-1)である。 接種後、22°C、2日間湿室条件に保ち、その後陽光恒温器(15時間照明)内で病斑形成状況 を観察した。
  • 病害抵抗性への影響 夏斑点病、網斑病、葉腐病、いもち病では、エンドファイト感染葉は非感染葉に比べて、病 斑数が少なく、病斑は小さくなりより抵抗性となった

    (図2 、

    写真1 )。これらのことからエンドファイト感染によりペレニアルライグラスは耐病性が向上した。 かさ枯病、炭疽病、株腐病では明瞭な抵抗性への差は認められなかった。

成果の活用面・留意点

  • エンドファイトを感染させることにより、病害抵抗性を向上させることが期待できる。
  • エンドファイト感染ペレニアルライグラスについて、アルカロイド産生の有無を検 討 していない。

具体的データ

図1 エンドファイト感染株からの非感染株の作出法

図2 ペレニアルライグラス切離葉における病斑長の比較

 

その他

  • 研究課題名:新形質付与のためのエンドファイトの機能解明
  • 予算区分 :パイオニア特研(エンドファイト)
  • 研究期間 :平成11年度(平成8年~10年)
  • 研究担当者:島貫忠幸、菅原幸哉、月星隆雄、大久保博人
  • 発表論文等:ネオティフォディウム・エンドファイトに感染したペレニアルライグラスの 各種病原菌に対する抵抗性、日植病報、65(6)、659(1999)