ギ酸・プロピオン酸の複合剤添加によるロールベールサイレージの品質改善
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要約
ギ酸とプロピオン酸のアンモニウム錯体を主成分とする複合剤を添加して調製した
ロールベールサイレージは、無添加サイレージに比較し、乳酸含量が増加し、pH値、酢酸および酪酸含量が低下する傾向を示し、かつ、採食性が向上する。
- 担当:草地試験場・資源循環研究グループ
- 連絡先:0287-37-7805
- 部会名:飼料利用
- 専門:動物栄養
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
ロールベールサイレージは、定置型サイロのサイレージに比較し、気密性に劣る条件下で調製
されるため品質や牛の採食性の低下を招きやすい。ギ酸とプロピオ
ン酸の混合添加でサイレージ品質の改善が可能であるが、添加時の作業機腐食が利用の難点で
あった。
最近、金属腐食を抑制可能なギ酸とプロピオン酸のアンモニウム錯体を主成分とする複合剤
(以下、複合剤と略す)が開発されたが、含まれるアンモニアは採
食性を低下させる可能性が懸念される。そこで、この複合剤添加によるロールベールサイレー
ジの品質改善効果と牛の採食性に及ぼす影響を検証する。
成果の内容・特徴
- スーダングラス等の5草種各々のサイレージ調製時に複合剤(換算有効成分含量:ギ酸
35.7%,プロピオン酸30%)を原物当たり0.3%添加す
ると、添加サイレージは無添加サイレージに比較し,乳酸含量が有意に(P<0.05)増加し、
pH値、酢酸および酪酸の含量が低下する傾向を示す
(表1)
。
- 複合剤添加サイレージは、無添加サイレージに比較し去勢牛の選択採食比率が高ま
り、採食性が有意に(P<0.05)向上する
(図1)
。
- 被覆ストレッチフィルムに多数のピンホールが生じた場合,添加の有無にかかわら
ず,表面だけでなく内部にも白色のカビが発生して去勢牛の採食性が低下し,処理区間で嗜好
性の差が認められなくなる
(図1)
。
成果の活用面・留意点
- サイレージ品質改善に及ぼすギ酸とプロピオン酸の混合添加による相加効果を検討する際
の情報として活用できる。
-
ロールベールサイレージを調製する場合は予乾を行い,ストレッチフィルムの損傷を最小限に
抑える等,サイレージ調製の基本原則を守る必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:生物系等添加物による高採食性ロールベールサイレージの品質保持技の開発
- 予算区分 :作物対応研究〔新用途畑作〕
- 研究期間 :平成11年度(平成8年~10年)
- 研究担当者:河本英憲,小川増弘,早坂貴代史,下名迫寛
- 発表論文等:ギ酸とプロピオン酸の複合剤の添加がロールベールラップサイレージの発酵
品質と嗜好性に及ぼす影響,草地試研報59,18-23,2000