牛ふん尿堆肥化過程における発酵温度維持のための通気方法

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要約

設定温度に対する通気のON/OFFによって1週間の温度維持が可能である。断熱された堆肥化反応槽であれば最高70°Cまで制御できる。またタイマーによって通気をON/OFFしても温度維持の可能性が示唆される。

  • 担当:草地試験場・放牧利用部・施設工学研究室
  • 連絡先:0287-37-7814
  • 部会名:飼料利用
  • 専門:農業施設
  • 対象:農業機械
  • 分類:研究

背景・ねらい

牛ふん尿由来の病原性大腸菌や雑草種子の問題が注目されている。発酵熱による堆肥の温度上 昇によってそれらを死滅できることが知られているが、温度を高温 に保つためには通気量の調節、またはこまめな切り返し作業といった多くの労力が必要となる 。そこで自動的に通気を調整し、温度を高温で維持する方法を考案 する。

成果の内容・特徴

  • おがくず、戻し堆肥が混ざった牛ふん尿(水分73.8~75.3%、3.5kg(約10L)を供試)の 堆肥化において通気方法を検討した。牛ふん 尿が入った反応槽は市販の試験用オーブンの中に設置される。オーブン内の温度は堆肥温度に 追従するため、この堆肥化過程では通気への放熱以外に見かけ上熱 損失がない。
  • 設定温度を境にして堆肥温度が高くなったことを検知すると電磁弁を介して堆肥に 一定量で通気し、低くなると電磁弁を閉じて通気を止める堆肥化システム(以下温度制御)を 考案した。これにより堆肥の発酵温度を設定温度に維持でき、最高70°Cまで温度制御が可能で ある

    (図1) 。

  • 温度制御によって連続通気した場合よりも乾物分解率が高くなる(連続通気、設定 温度50、60、65、70°Cの条件でそれぞれ7.6、14.3、11.2、7.8、4.0%)。
  • 発酵温度を高温域に維持しつつ、通気のON/OFF方法をより単純化するためにタイマ ーによる定時的なON/OFF(以下タイマー制御)を検討した。その結果、4時間ON/3時間OFFまた は4時間ON/5時間OFFの条件で55°Cまでのタイマー制御が可能である

    (図2) 。

  • タイマー制御によって連続通気した場合よりも乾物分解率が高くなる(連続通気、4 時間ON/1、2、3、5OFFの条件でそれぞれ7.6、8.4、9.3、11.5、11.8%)。
  • 上記の結果を踏まえて、実用規模における約20m3(縦7.15×横3.74×高さ0.75m、試 験期間中平均/最高/最低気 温:13.4/18.7/-3.2°C)の反応槽で通気のON/OFFを検討した。その結果、実用規模であっても 温度制御は可能であるが、タイマー制御の場 合は堆肥温度の低下が見られる。

    (図3)

成果の活用面・留意点

  • 通気のON/OFFによって乾物分解率が高くなることから、堆肥の処理時間を短縮できる可能 性がある。
  • 処理施設の規模、構造毎に制御間隔、設定温度、通気量の条件を決定するまでには 至っていない。また、堆肥温度を高温で制御するほど過乾燥する傾向があるので水分調整に気 をつける。

具体的データ

図1 温度による通気量制御をした場合の堆肥温度の変化

図2 ON/OFFタイマーによる通気制御をした場合の堆肥温度変化

図3 実用規模試験における堆肥温度の変化

その他

  • 研究課題名:土地利用型畜産における家畜排泄物の処理・利用方式の開発と現地実証
  • 予算区分 :環境研究(家畜排泄物)
  • 研究期間 :平成11年度(平成9年~11年)
  • 研究担当者:阿部佳之、伊藤信雄、梅田直円、加茂幹男
  • 発表論文等:家畜ふん尿の堆肥化過程での通風条件による高温維持の可能性,第59回農業 機械学会年次大会講演要旨集,2000