ラジエーションハイブリッドパネルを用いたブタゲノムマッピング

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要約

大量培養した放射線照射ブタ細胞とマウス細胞のハイブリッドクローンから抽出したゲノムを用い、ブタ遺伝子の染色体上への物理的マッピングを行うことが可能である。

  • 畜産試験場 育種部 遺伝子機能研究室
  • 連絡先:0298-38-8662
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

家畜の生産性に関与する遺伝子の解明には、既知遺伝子及び未知遺伝子の詳細な染色体上の位置情報が必要である。これまで、実験家系を用いた連鎖地図においてはペアレント間で多型性のあるDNA配列だけを染色体上に位置付けること(マッピング)が可能であり、多型性のない配列を染色体上にマッピングすることはできなかった。 多型性配列及び実験家系に拠らないマッピング方法としてラジエーションハイブリッドパネル(RH Panel)の利用が提案されていたことから、放射線照射ブタ細胞とマウス細胞のハイブリッドクローン細胞の作出とマッピングを試みた。すなわち、ドナー細胞として7,000~8,000radでX線照射した正常ブタ大動脈内皮細胞を、レシピエントとしてマウスL(TK-)細胞を用いて細胞融合を行い、ハイブリッドクローン110株を得た後、マイクロサテライト約300個を用いて物理的マッピングが可能であるかを検討した。

成果の内容・特徴

  • ブタ連鎖地図上で既に位置付けられているマイクロサテライトマーカー483種についてプライマーセットを準備し、ブタ及びマ ウスで適切なPCR結果を得た305個について、110のハイブリッドクローン(細胞)より抽出したゲノムを用いてPCRを行い、PCR産物の有無の情報 をRH Mapper ソフトを用いて解析し、フレーム地図を作成した (図1)。
  • 1次タイピングの結果から得られたブタゲノムの平均保持率は28%であった (図2)。

成果の活用面・留意点

クローンからのDNA抽出物は最も多いものでPCR約200,000回分、最も少ないものでも、約40,000回のPCRに十分な量であった。ブタのESTs(Expressed Sequence Tags:発現遺伝子の部分配列)および何らかのDNA配列を、ブタ染色体上に位置付けることが必要な場合、ハイブリッドクローンからのDNA抽出物を分与することが可能である。

具体的データ

図1 RHパネルを用いたフレーム地図

図2 RHクローン中のブタゲノム保持率の度数分布

その他

  • 研究課題名: 豚椎骨数関与遺伝子の解明
  • 予算区分: 交流共同(STAFF研究所) (JRA助成)
  • 研究期間: 平成12年度(平成10~12年度)
  • 研究担当者: 浜島紀之(STAFF研),鈴木秀昭(STAFF研),三橋忠由,安江 博,大石孝雄
  • 発表論文等:
    1.ブタRadiation Hybrid Panelの作製.第22回日本分子生物学会. 2000.
    2.The preliminary report on establishment of 113 porcine. radiation hybrid panel cells. Plant & Animal Genome IIX. 2000.
    3.ブタ1番染色体のRH地図の構築とコンパラティブマップの作成.日本動物遺伝育種学会第1回大会.2000.
    4.Establishment of the porcine radiation hybrid panel and construction of the frame work map. Plant & Animal Genome IX.2001.