胚盤葉のトランスフェクションによるニワトリ初期胚への外来遺伝子の導入
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
放卵直後のステージX胚盤葉のリポフェクションおよびエレクトロポーレーション処理により、ニワトリ初期胚への外来遺伝子の導入が可能である。また、この方法により卵巣、 精巣を含む各種胚体組織へ外来遺伝子を導入することが可能である。
- 担当:畜産試験場 育種部 遺伝子制御研究室
- 連絡先:0298-38-8622
- 部会名:畜産
- 専門:育種
- 対象:家禽類
- 分類:研究
背景・ねらい
鳥類においては放卵後の受精卵は容易に得られるため、このステージにおける胚盤葉の操作により外来遺伝子を導入することができれば、ニワトリ初期胚への
簡易な外来遺伝子の導入法の開発が期待できる。最近におけるリポフェクションやエレクトロポーレーションの技術の進展により、外来遺伝子の導入効率が向上
したことから、ステージX胚盤葉へのインビボにおけるリポフェクションおよびエレクトロポーレーション処理により初期胚への外来遺伝子の導入を行う。
成果の内容・特徴
- 胚盤葉にDNA(GFP遺伝子)とリポソームの複合体を注入し、さらにエレクトロポーレーション処理として、胚盤葉の両側に4mmの間隔で並行型電極を置いて、電圧10-20V、時間50
msec、間隔1秒、回数5回の条件で電気パルスをかけることにより、胚の生存率に大きな影響を与えることなく、外来遺伝子の導入と発現が可能であった。
- リポフェクション及びエレクトロポーレーションでは、初期胚における外来遺伝子の発現に関してほぼ同じ効果が得られた。また、両者を併用することにより、初期胚における外来遺伝子の発現の高率が向上することが認められた。
- 培養2-3日目において、約80%の胚の胚体および胚体外膜でGFP遺伝子の発現が認められた。GFP遺伝子の発現の多くはモザイク状であったが、胚体全体で発現の認められたものもあった
(図1)。培養10日目までに死亡した胚についてGFP遺伝子の存在を調べたところ、ほとんどの胚の胚体(94.1%、16/17)および胚体外膜(100%、17/17)において、その存在が確認された。
- 培養16-20日目において、胚体内各組織(心臓、肝臓、胃、筋肉、脳、卵巣、精巣)を採取し、GFP遺伝子の存在を調べたところ、卵巣、精巣を含む各種組織にGFP遺伝子が導入されていたことが示された
(表1)。
成果の活用面・留意点
- ニワトリ胚盤葉のインビボにおけるリポフェクションおよびエレクトロポーレーションにより、初期胚への外来遺伝子の導入と発現が可能となり、遺伝子の機能を調べる実験系として利用可能である。
- 外来遺伝子の発現はモザイク状であり、また一過性の発現である点に留意する必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:始原生殖細胞へのDNA導入技術の開発
- 予算区分:ゲノム関係研究(動物ゲノム)
- 研究期間: 平12年度(平成9~12年度)
- 研究担当者:内藤 充、松原悠子、春海 隆、田上貴寛、佐野晶子
- 発表論文等:
1.インビボにおけるニワトリ胚盤葉への遺伝子導入、日本畜産学会第97回大会講演要旨、p.185, 2000.
2.Efficient transfection of chicken blastodermas in vivo using GFP gene as a marker. Proceedings of the 21st World's Poultry Congress, August 20-24, Montreal, Canada, pp.1-5 (in CD), 2000.
3.Efficient transfection of chicken blastoderms in vivo by lipofection and electroporation using green fluorescent protein gene as a marker. Animal Science Journal, 71: 377-385, 2000.