Serial No 1508 顕微注入法による体細胞クローン豚の作出

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要約

胎児由来の線維芽細胞核を、ピエゾ式マイクロマニピュレーターを用いて除核卵子内に注入することにより、体細胞クローン豚が得られる。

  • 担当:畜産試験場 育種部 育種素材開発研究室
  • 連絡先:0298-38-8624
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種・繁殖
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

体細胞クローン豚作出の技術は、優良種豚の増産をはじめとする育種改良や遺伝資源の保存へ利用できる。しかし、体細胞クローン豚の成功例はこれまでなく、その技術開発が期待されてきた。本研究は、体細胞クローン豚の作出法を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 未受精卵子の活性化条件を検討した結果、1.5KV/cm,10μsec x1 の電気パルスを付与し、NCSU23の培養液で培養した場合に、最も良好な発生率が得られることが明らかになった (表1)。
  • ピエゾ式マイクロマニピュレーターを用いることにより、除核および核の注入操作が容易に行えることが明らかになった。
  • 受胎率を高める目的で、人工授精した仮親へ移植したが、体細胞クローン豚は得られなかった (表2)。
  • 梅山豚(黒色の毛色)の胎児由来の線維芽細胞核を、ランドレースまたはその雑種(白色または白色に黒斑)由来の除核した未受精卵子へ注入した。 活性化40時間後において、発生した核移植卵子のみを4頭の仮親に移植した結果、1頭が妊娠し、1頭のクローン豚が誕生した (表2)。クローン豚である証明は、毛色、性およびDNA分析により行った。

成果の活用面・留意点

顕微注入法は、従来の電気融合法に比べて操作が容易なため、他の家畜への応用が期待できる。さらに、豚の臓器が人に類似していることから、慢性的に不足し ている移植用の人臓器を補う手段として、異種移植への応用が考えられる。しかし、作出効率を高めるための周辺技術の改善が、今後とも必要である。

具体的データ

表1電気パルスを与えた豚体内成熟卵子の体外培養成績

 

表2 核移植豚卵子の体外での発生と移植成績

 

その他

  • 研究課題名: 豚胚由来未分化幹細胞の作出
  • 予算区分: 大型別枠(形態生理)・交流共同
  • 研究期間: 平成12年度(平成10~12年度)
  • 研究担当者: 大西彰,岩元正樹・武田久美子,花田博文
  • 発表論文等:Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei.Science, 289, 1188-1190 (2000)
    特許申請中3件