ハリナシミツバチ類の周年飼養及び群殖が可能な巣箱
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要約
我が国の施設栽培におけるポリネーターとして有望視されるハリナシミツバチ類(Meliponinae)を周年飼養し、併せて群殖(コロニーの増殖)が行える加温式水平分離式巣箱を提供する。
- 担当:畜産試験場・育種部・みつばち研究室
- 連絡先:0298-38-8626
- 部会名:畜産
- 専門:育種
- 対象:蜜蜂
- 分類:研究
背景・ねらい
熱帯・亜熱帯地域で長い養蜂歴史をもつハリナシミツバチ類(Meliponinae)はミツバチ類(Apinae)と同様、高次真社会性昆虫類に属する。
わが国での施設栽培を前提としたハリナシミツバチ類のポリネーター(花粉媒介者)としての利用特性を見ると、刺傷性がない、訪花性が高い、高温耐性が強
い、採餌行動圏が狭い、巣は永続性、野外に逃亡しても温帯地域では定着できず生態系に影響を与えない、など多くの利点が考えられる。温帯地域で飼養する最
大の問題は冬季の低温である。
本巣箱はその問題を解決するとともにコロニーの増殖をも可能にする。
成果の内容・特徴
- ハリナシミツバチ類(
図1)は低温に対する休眠機構をもたず、また、ミツバチ類(Apis)のように巣内温度を一定にする恒常機能ももたない(
図2)。
- ハリナシミツバチの巣は、蜜蝋と樹脂の混合物(プロポリス)で作られており、これらは熱伝導性が低く、また、融点は60数℃
と低い。そのため、加温巣箱の製作には巣内に直接、熱源を設置することはできない。考案された巣箱は、内巣箱(本巣箱)とそれを覆う外巣箱から成り、外巣
箱には加温装置を備える。本巣箱と外巣箱との空間の温度を設定して本巣箱内部の温度を制御する仕組みである。
- 巣材の熱伝導性と熱源容量とのバランスがとれないと、低温時の熱量供給不足による温度低下、あるいは、熱源からの輻射熱による本巣箱内での蓄熱のため、設定以上の温度となり、昼夜温の逆転現象が起こる(
図3)。該当巣箱では熱反射板の利用および温度制御回路により解決されている(
図4)。
- 群殖は、本巣箱のスプリット板に沿って巣盤を水平に二分割し、それぞれの片割れを新たな本巣箱と組み合わせることにより行う。
- 波状的に増加するコロニー重量が、群殖時期の目安となる。
6.
これらの巣箱(図5)により、導入した4種のハリナシミツバチコロニーの周年飼養および群殖が容易になされた。
成果の活用面・留意点
我が国においては全てのハリナシミツバチ類が未利用種となっており、これまでに実利用を目的としたコロニーの導入はなされていない。
具体的データ


その他
- 研究課題名: 高次真社会性昆虫類の有用形質の特定および利用技術の開発
- 予算区分: 経常
- 研究期間: 平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者: 天野和宏、根本 鉄
発表論文等:
1.特許第3054633号(2000)「ハリナシバチ類の周年飼養及び群殖が可能な巣箱」
2.What are Stingless Bees, and Why and How to Use Them as Crop Pollinations? - a Review -.JARQ 34(3), p183-190 (2000)