免疫不全マウスの腎被膜下に移植したウシ胎子卵巣からの卵胞の発育
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要約
あらかじめ卵巣を摘出した免疫不全マウスの腎被膜下に、原始卵胞、二次卵胞を含むウシ胎子卵巣片を移植することにより、従来体外培養系で発育が困難であった原始卵胞、二次卵胞を胞状卵胞に発育させることができる。また、ドナー胎子の胎齢により腎被膜下への卵巣片生着率、卵胞の発育開始時期は異なる。
- 担当: 畜産試験場 繁殖部 発生分化研究室
- 連絡先:0298-38-7384
- 部会名:畜産
- 専門:繁殖
- 対象:牛・実験動物
- 分類:研究
背景・ねらい
ウシ原始卵胞、二次卵胞からの胞状卵胞への体外発育技術は現状では確立されていない。また、ウシなど一年一産の動物の遺伝資源をより有効に利用するため
に、世代間隔を短縮させることが求められている。本研究は、ウシ胎子卵巣に含まれる原始卵胞、二次卵胞を胞状卵胞に発育させ、それらに含まれる卵子を体外
受精等に利用できるようにするため、胎子卵巣片を卵巣摘出免疫不全マウスの腎被膜下に移植して胞状卵胞へ発育させることを目的とする。
成果の内容・特徴
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卵巣摘出免疫不全マウス(ヌードマウス)腎被膜下にウシ胎子由来
の卵巣片を移植すると、これらの移植片は生着した。移植卵巣片に含まれる原始・二次卵胞は発育し、最大で約1cmの胞状卵胞が形成された。また、卵胞中の卵母細胞も発育し、形態的に正常な卵核胞期の卵母細胞がみられた
(図)。
- 卵巣片移植後卵胞が発育して性ホルモンを分泌し、発情周期が回帰する時期を調べるために、毎日マウスのスメアを観察した。そ
の結果、移植マウスの発情周期が回帰するまでの期間は、卵巣中に胞状卵胞のない頭臀長30~50cmのウシ胎子卵巣片を移植したマウスでは、卵巣中に胞状
卵胞が存在する70~90cmのものおよび対照の成牛のものよりも長期間を要した。また、70~90cmの胎子卵巣片を移植したマウスでは、成牛のものよ
りも短期間で発情が回帰した
(表1)。
- ドナーウシ胎子の頭臀長を30cm以下から20cmごとに4区に分けて、移植卵巣の生着を観察した。その結果、頭臀長70~90cmのウシ胎子由来の卵巣片は他のものと比較して有意に生着率が高く、移植片の生着にドナーの胎齢が影響することが示唆された
(表2)。
成果の活用面・留意点
ヌードマウスの腎被膜下にウシ卵巣片を移植することによって、胎子由来の卵巣中の原始・二次卵胞を、胞状卵胞へ発育させることは可能になったが、その胞状
卵胞に含まれる卵母細胞の成熟や受精能については、今後の検討が必要である。また、マウス発情周期とウシ卵胞発育との関係を明らかにする必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 卵子の成熟培養技術の改良
- 予算区分: 畜産対応研究 [繁殖技術]
- 研究期間:
平成12年度(平成7-12年)
- 研究担当者:
細江実佐、徳永智之
- 発表論文等:ヌードマウスへの異種移植によるウシ胎子卵巣由来卵胞の発育. 第41回日本哺乳動物卵子学会講演要旨:
S46, 2000