ウシ子宮内膜マトリックスメタロプロテナーゼの妊娠中の動態
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要約
ウシでは妊娠中の子宮内膜マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)-2産生およびその遺伝子発現が減少する。これらの動態は血中MMP-2の変化と一致し、血中MMP-2は子宮内膜機能の指標となる。また、MMP-9遺伝子は子宮内膜および胎膜に恒常的に発現する。
- 担当:農林水産省 畜産試験場 繁殖部生殖内分泌研究室
- 連絡先:0298-38-8687
- 部会名:畜産
- 専門:繁殖
- 対象:乳用牛・肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
ウシ受精胚の着床に適した母体子宮の調節、改変を制御する要因の解明は、胚の早期死滅防止技術の開発に有効な情報を提供する。着床、妊娠期の子宮内膜の
改変に関わる子宮および胎盤組織中マトリックスメタロプロテナーゼ(MMPs)のうち、中心的役割を担うと考えられるMMP-2とMMP-9の動態検索
と、MMPs酵素の繁殖生理学的診断への適用について検討する。
成果の内容・特徴
-
子宮内膜におけるMMP-2および-9産生は妊娠の成立に伴い減少する
(図1)。
- ウシMMP-2遺伝子の部分配列(495bp)およびMMP-9遺伝子の部分配列(991bp)が明らかとなった。その配列はヒトやラットのそれと高い相同性が認められる。
- 定量的PCRにより子宮内膜ではMMP-2遺伝子発現は発情期に高く妊娠の進行に伴い減退し、MMP-9遺伝子は概ね恒常的に発現する。胎膜ではMMP-2遺伝子は着床期に殆ど発現しないが、MMP-9遺伝子比較的高い発現を示す
(図2)。
- 血中MMP-2はザイモグラフィーにより安定した検出が可能であり、MMP-2は受精後徐々に上昇するが着床時期である妊娠30日頃に一過性の減少を示しその後再び上昇する
(図3)。
成果の活用面・留意点
MMPsがウシの着床期に重要な役割を果たすことが明らかとなり、着床や子宮内膜機能の診断技術への展望が開けた。しかしながら簡便で容易な診断技術への応用にはMMPsの特異性の高い抗体の作成が必要である。また、妊娠に伴う子宮内膜組織の改変機序の解明には、MMP-2やMMP-9だけでなくその他のMMPsの発現とその発現制御機構を明らかにする必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 着床に伴う子宮内膜組織の改変と制御機構の解明
- 予算区分:
畜産対応研究〔繁殖技術〕
- 研究期間:
平成12年度(平成10年,12年)
- 研究担当者:
橋爪一善, 高橋透, 今井敬, 竹澤俊明
- 発表論文等:
1.Regeneration of bovine uterine epithelial cell lines and formation of spheroids:
in vitro model of uterine tissue. In "Cloned Animals and Placentation",
Eds; R.M.Roberts, R.Yanagimachi, T.Kariya, K.Hashizume, p.113-117. Yokendo
2000
2.Matrix-metalloproteinases-2 and -9 expression in bovine endometrium., J
Reprod. Fert., 1999. 24, 27
3.ウシ妊娠子宮及び胎盤中のマトリックスメタロプロテナーゼ遺伝子の動態, 第93回日本繁殖生物学会講演旨 106 (2000)