近赤外分光法による尿中諸成分の測定と乳中尿素窒素含量の推定

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要約

搾乳牛の尿中クレアチニン,窒素,アラントイン含量は近赤外分光法により簡易に推定することができ,従来法との相関は順に,0.80,0.91及び0.91である。また,乳中尿素窒素含量についても尿の近赤外スペクトルにより高い精度で推定することができる(r=0.92)。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:0298-38-8655
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

乳牛の栄養状態・生理状態を的確に把握することは適切な栄養管理を行うための第1歩であり,乳牛生体における栄養素の代謝プロセスを,近赤外分光法に よって非破壊・無侵襲的に連続モニタリングする手法を開発することができれば,精密な乳牛飼養管理システムの実現に大きく寄与するものと思われる。 そこで,サンプリングが容易であり,給与飼料診断に有用な情報を提供するものと思われる尿を[対象]として,その窒素関連諸成分の近赤外分光法による測 定を試みる。

成果の内容・特徴

  • 130~230点の搾乳牛の尿のクレアチニン,窒素,アラントイン含量と尿採取と同日に採取した乳の尿素窒素含量を従来法で分析するとともに,尿については1100~2500nmの波長範囲で,透過厚 1mmのセルを用いて透過法によりスペクトルを計測した。解析には,二次微分を行ったデータを二分し,一方を検量線作成に,他方を検量線検定に用いた。
  • 検量線の作成には重回帰分析法(ステップワイズ法)により4波長を選択した。クレアチニン,窒素,アラントイン,乳中尿素窒 素の推定のために選択した波長と検量線の相関係数,標準誤差,検定用試料における相関係数と標準誤差,実用性の指標とされるRPD(検定用試料における推 定誤差に対する試料の標準偏差の比)を 表1に,また,クレアチニンと乳中尿素窒素の測定例を 図1, 2に示した。
  • 各成分の検量線の相関係数は0.80~0.92,RPDは2.50~2.96であり,いずれもモニタリングに用いるためには十分な精度であることが明らかとなった。

成果の活用面・留意点

  • クレアチニンは尿量の推定に有効であり,尿中アラントイン,窒素,乳中尿素窒素と併せて用いることにより,スポット尿による搾乳牛におけるエネルギー・蛋白質栄養充足状況の判定法として活用できる。その際には,朝,採食前の尿を用いると安定した成績が得られる。
  • 実用化のためには,分析機器の低コスト化を図ることができる短波長域(600-1100nm)での測定精度を高める必要がある。

具体的データ

表1 尿の近赤外スペクトルによる各成分推定のための検量線とその推定及び検定精度

 

図1 近赤外分光法による尿中クレアチンニン含量(mg/dl)の推定

 

図2 尿スペクトルを用いた乳中尿素窒素含量(mg/dl)の推定

 

その他

  • 研究課題名:栄養条件が第一胃発酵及び乳房血流量・酸素濃度に及ぼす影響の動的解析
  • 予算区分: 生研機構「近赤外」
  • 研究期間:平成12年度(平成8年~12年)
  • 研究担当者:栗崎純一,水町功子,辻 典子
  • 発表論文等:
    1.Comparison of short and long wavelength of near infrared spectroscopy for predicting nitrogen and allantoin in urine. The 2nd Int. Seminar on Tropical Anim. Prod. 1998
    2.Monitoring Blood Urea Nitrogen through Near Infrared Spectra of Urine. The 9th Int. Conf. on NIRS. Proceedings of the 9th International Conference, P723. 1999
    3.Measuring urinary creatinine by NIRS spectra of urine in dairy cattle. 第97回日本畜産学会大会 講演要旨集 153. 平成12年