妊娠牛の血漿中ステロイドホルモン濃度及び初乳中IgG濃度に対するセレン添加効果
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要約
妊娠牛に亜セレン酸ソーダをセレンとして0.3ppm給与することにより、妊娠後期の血漿中プロジェステロン濃度は有意に増加し、分娩時のエストロジェン濃度も増加傾向を示す。しかし初乳中の免疫グロブリンG濃度に有意な差は及ぼさない。
- 担当:畜産試験場 栄養部 大家畜栄養管理研究室
- 連絡先:0298-38-8661
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:乳用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
セレンは栄養性筋ジストロフィー(白筋症)を防ぐ因子として知られていたが、その機能はそれだけにとどまらず非常に多岐にわたっていることがこれまでに
報告されている。特に繁殖機能との関わりを示すデータが多く、例えば不妊の改善、卵巣嚢腫発生率の低減、胎盤停滞の防止などがあげられる。しかしその作用
メカニズムはほとんど解明されておらず、必ずしもセレンの持つ機能が給与システムに生かされていない状況にある。繁殖機能におけるセレンの機能を解明する
事により、セレンの積極的な利用を図り、繁殖成績を向上させることが可能となると期待される。本研究では、セレンの給与レベルの違いが妊娠牛の血漿中性ス
テロイドホルモン濃度および初乳中免疫グロブリンG濃度に及ぼす影響について検討する。
成果の内容・特徴
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妊娠全期間を通して、基礎飼料(平均セレン含量0.018ppm)に亜セレン酸ソーダをセレンとして0.3ppm増となるよう添加区にのみ給与した。その
結果、妊娠前期の血漿中プロジェステロン(P)濃度は個体差が大きく処理区間で差は観察されなかったが、妊娠後期においてセレン添加区において血漿中P濃
度が有意に高くなった
(図1)。セレンの黄体機能活性化効果が妊娠牛で確認された。
- 同じ性ステロイドホルモンであるエストロジェンの血漿中濃度に対するセレンの効果は、分娩時においてエストロン、エストラジオール17βともにセレン添加区で高い傾向が見られたが、有意差はなかった
(図2)。
- 妊娠期のセレン添加は初乳中セレン濃度に差をもたらしたが、免疫グロブリンG(IgG)濃度に差は見られなかった
(図3)
成果の活用面・留意点
妊娠牛に対するセレンの投与は黄体機能の活性化を通じて妊娠維持に貢献できる可能性が示された。
具体的データ
その他
- 研究課題名:セレンの給与水準および化学形態が卵巣機能及び胎盤停滞の発生に及ぼす影響
- 予算区分:総合的開発[繁殖技術]
- 研究期間:平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:鎌田八郎、野中最子、柾木茂彦
- 発表論文等:妊娠牛とその産子の血中ホルモン濃度ならびに好中球貪食能に対するセレン投与の影響 第95回日本畜産学会講演要旨集 p31(1999)