ウシおよびブタの培養筋衛星細胞における筋分化転写因子の検出法とその発現様式
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要約
ウシおよびブタ骨格筋の筋転写因子群Myf5、MyoD、myogenin、MRF4は、各々に特異的な RT-PCRにより、その発現を検出、半定量することができる。初代培養ウシ筋衛星細胞の筋分化は、筋転写因子群が順次発現することで誘導され、特にMyoDの発現が重要である。
- 担当:畜産試験場・加工部・畜産物利用開発研究室
- 連絡先:0298-38-8687
- 部会名:畜産
- 専門:加工利用
- 対象:全家畜
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜骨格筋組織は、筋線維を構造上の基本単位として形成されている。各筋線維は、家畜個体が成長する過程で、筋衛星細胞が互いに融合することによりつく
られる多核の筋細胞である。筋衛星細胞の融合が起こるとき、個々の細胞において筋分化が進行している。成体の筋組織では、生体維持のために断続的に筋分化
が進行する。これは食肉の生産過程そのものであるにもかかわらず、これまで細胞の視点での食肉の研究はほとんど行われていない。この過程を解明することに
より、食肉の生産を質的または量的に制御する技術の開発が可能となる。
そこで、ウシおよびブタ骨格筋から調製した初代培養筋衛星細胞を用い、筋分化を制御する筋分化転写因子群の発現様式を明らかにする。また、そのために必要
となるRT-PCR法による筋転写因子群の検出および半定量する系を確立する。
成果の内容・特徴
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ウシおよびブタの筋転写因子Myf5、MyoD、myogenin、MRF4を検出するための、それぞれに特異的なPCR用プライマーを設計し、その検出を可能にした。半定量試験に用いるRPL7用プライマーも併せて設計した
(図1)。
- RPL7を内部標準とするマルチプレックスRT-PCR法により、各転写因子専用のプライマーでそれぞれの発現量を半定量的に比較する系を確立した
(図2)。
- 確立した検出系により、ウシ大腿二頭筋の組織およびその培養筋衛星細胞における各転写因子の発現を経時的に追跡したところ、Myf5、MyoD、myogenin、MRF4が順次発現していくことが明らかになった
(図3)。さらに、同条件で筋分化が進行しないブタ筋衛星細胞の発現様式と比較することにより、筋衛星細胞の筋分化にMyoDの発現が重要であることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
本成果は、筋線維形成機構を解明するための有力な手法となる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:家畜筋芽細胞の融合・多核化の制御技術の開発
- 予算区分:大型別枠(バイオデザイン計画)
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)
- 研究担当者:室谷進、中島郁世、千国幸一
- 発表論文等:
1.室谷進、中島郁世、千国幸一.家畜筋衛星細胞の筋管形成におけるmyogeninとVLA-4の役割.第97回日本畜産学会大会講演要旨、p146.2000.
2.室谷進、中島郁世、千国幸一.家畜筋衛星細胞の筋管形成に伴う筋転写因子群の発現.第98回日本畜産学会大会シンポジウム.(印刷中)