牛肉の脂肪含量と冷蔵中における脂質過酸化物量との関係
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
牛肉保存中の品質劣化要因の一つである脂質過酸化について、脂肪含量との関連を検討したところ、脂肪含量と脂質過酸化反応の最終産物量の間に有意な負の相関がある。脂肪含量が高い牛肉は脂質過酸化が進みにくい。
- 担当:畜産試験場・加工部・畜産物品質評価研究室
- 連絡先:0298-38-8690
- 部会名:畜産
- 専門:加工利用
- 対象:肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
牛肉保存中の脂質過酸化は、反応生成物がオフフレーバーの原因となったり、細胞毒性や変異原性を持つなど、品質劣化要因の一つである。一方、わが国の肉
用牛の一つである黒毛和種は、高い脂肪含量を特徴とするとともに、風味向上を目的とした長期の熟成処理を施されることがある。このため、牛肉保存中におけ
る脂質過酸化は、黒毛和牛肉にとって極めて重要な問題である。
これまで、牛肉の脂質過酸化は、脂肪含量の高いものにおいては進みにくいことが経験的に知られて来たが、検討例が少なく、和牛ほどの高い脂肪含量のサン
プルを用いた研究例も見られなかった。そこで、黒毛和種由来の牛肉サンプルを用い、脂肪含量の高い牛肉における脂質過酸化の程度を検討した。
成果の内容・特徴
-
種々の脂肪含量の牛肉(腰最長筋)を4℃の冷蔵庫で10日間冷蔵保存し、脂質過酸化の最終産物であるチオバルビツール酸反応物(TBARS)量の変化を測定したところ、冷蔵保存中に上昇した
(図1)。
- TBARS量は、脂肪交雑の等級が高いものにおいては上昇の程度が小さかった
(図1)。
- TBARS量は、冷蔵保存1,4,7および10日目において、脂肪含量と有意な(P<0.05)負の相関が見られた
(図2は冷蔵保存10日目のデータを示した)。
- 以上の結果から、脂肪含量の高い牛肉は、脂肪含量の低い牛肉よりも、冷蔵保存中に脂質過酸化物の生成がおこりにくく、脂質の安定性が高いと考えられた。
成果の活用面・留意点
- 本知見は牛肉の品質安定性に関する基礎資料となる。
- 本知見の詳細なメカニズムについては解明に至っていない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:牛肉の熟成中における脂質・蛋白質の酸化と脂肪交雑との関係
- 予算区分:経常 ・小事項
- 研究期間:平成12年度(平成9年~12年)
- 研究担当者:佐々木 啓介、三津本 充
- 発表論文等:佐々木・三津本・川畑、牛サーロインにおける脂肪含量と脂質過酸化の関係、第95回日本畜産学会大会講演要旨集p.148 (1999)