市場規模と価格変動に基づくブロイラー現物先物市場標準品候補の選定
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要約
ブロイラー先物市場開設のため,各種国産ブロイラー解体品の年間市場規模を調査したところ,「もも肉」の市場規模が約1900億円と大きい.また,国産ブロイラー「もも肉」の年間価格変動係数は8.93%/年であり,ブロイラー現物先物市場標準品としてふさわしい.
- 担当:畜産試験場 飼養環境部 飼養システム研究室
- 連絡先:0298-38-8669
- 部会名:畜産
- 専門:経営
- 対象:肉用鶏
- 分類:研究
背景・ねらい
外国からのチルド鶏肉の輸入増,飼料用とうもろこしの輸入価格変動,天候と消費動向等による国産ブロイラーの価格変動リスクを軽減するためには,ブロイ
ラーを先物市場に上場する必要がある.しかし,日本では,畜産物が先物市場に上場されたことは無く,畜産物を含む農産物先物取引に関する知見もほとんどな
い.
そこで,米国における先進事例を検討することにより,上場可能性とその実現のために必要な条件や方策を明らかにする.また,国内ブロイラー流通の中心で
ある国産ブロイラー解体品の市場規模と価格変動にもとづく,国産生鮮ブロイラー「もも肉」と「むね肉」(以下,「もも肉」,「むね肉」)の標準品としての
妥当性を検討する.
成果の内容・特徴
- 先進事例である米国ブロイラー産業と先物市場上場との関係を分析した結果,先物市場の標準品が年月の推移とともに現物市場の流通実態とあわなくなり,市場規模も縮小し,価格変動もほとんど無くなったことが上場廃止の要因であることが明らかになった.
- 1996年,国産ブロイラー年間卸売り金額3827億円に対し,「もも肉」は52%,「むね肉」は19%を占め,「もも肉」
と「むね肉」は国産ブロイラー製品の中で最も市場価値のある商品である.1990年から1996年までの「もも肉」と「むね肉」の市場規模と,既に先物市
場に上場されている輸入とうもろこしの年間市場規模を
表1に示した.
国産ブロイラー「もも肉」の市場規模は輸入とうもろこしと同等であり,上場の適格条件を有していることが明らかになった.
- 標準品候補の「もも肉」,「むね肉」,「もも肉」と「むね肉」のセット(以下,「セット」)の市場規模(1990年から1996年)に関して,「もも肉」の市場規模は安定的であるのに対して,「むね肉」の市場規模は縮小傾向を示し
(表1),価格変動(1990年から1997年)は「もも肉」>「むね肉」>「セット」でああることから,「もも肉」の推定出来高が最も大きい
(表2).
- 現在の国内でのブロイラー流通は,解体品が主流であり,解体品の中心はもも肉とむね肉である.ブロイラー先物市場の標準品候補として,「むね肉」と比較して輸入の影響が小さく,十分な価格変動をもつ「もも肉」が最適である.
成果の活用面・留意点
本研究成果を基に,1999年11月1日以降,関門商品取引所において,国産生鮮ブロイラーもも肉を標準品とした畜産物先物取引が開始された.
本研究成果は,国内での消費量と市場規模が大きく,海外からの輸入増によって価格変動リスクにさらされている国産豚肉などの国内産農産物に対して,適用が可能である.
具体的データ
その他
- 研究課題名:養鶏における飼料構造等生産様式及び生産物の流通構造に関するファクト情報の収集と解析
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成9年~12年度)
- 研究担当者:賀来康一
- 発表論文等:
1.鶏肉国内流通と国産ブロイラー価格.日本畜産学会報,68(10),p977-982(1997)
2)国産ブロイラー正肉の価格変動に関する先物市場上場適正.
日本畜産学会報,69(2),p154-160(1998)
2.国産ブロイラー正肉の価格変動に関する先物市場上場適正.日本畜産学会報,69(2),p154-160(1998)
3.米国ブロイラー・鶏卵の価格変動と先物市場上場の可能性. 日本畜産学会報,69(8),p797-804(1998)
4.米国内のブロイラー流通と価格形成.日本畜産学会報,69(9),p883-890(1998)
5.国産ブロイラーと輸入とうもろこしの市場規模と出来高に基づくブロイラー 先物取引標準品候補の検討.日本畜産学会報,70(9),pJ219-J225(1999)
6.ブロイラー先物市場における受渡しと指標価格形成機能. 日本畜産学会報,71(7),pJ82-J90(2000)
7.農産物の価格変動と市場規模にもとづくブロイラーと鶏卵の先物市場における出来高の検討.日本畜産学会報,71(9),pJ370-J380(2000)
8.ブロイラーの先物市場上場に関する研究.畜産試験場研究報告第61号,p33-107(2001)