妊娠牛における子宮動脈血流量の測定法
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要約
妊娠牛の左けん部を起立位のまま切開し,触診で子宮動脈へ超音波血流量センサーを装着することによって,分娩前の乳牛における子宮動脈血流量を簡易に長期間測定できる。
- 担当:草地試験場 飼料生産利用部 乳牛飼養研究室
- 連絡先:0287-37-7806
- 部会名:草地・飼料利用 畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
妊娠子宮での養分吸収量が定量的に測定可能となれば,種々の妊娠日数における妊娠子宮の養分要求量や,給与飼料の粗濃比や給与量の違いが妊娠子宮の養分吸
収量に及ぼす影響が明らかになる。妊娠子宮への養分吸収量は,子宮動・静脈血中の成分濃度差と子宮動脈の血流量を測定し,それらを掛け合わせることで計算
できる。そこで,子宮動脈への超音波血流量センサーを簡易に装着する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 妊娠牛を枠場に保定し,鎮静剤および局所麻酔を注射した後に起立位のまま左けん部を切開し,触診で子宮動脈へ超音波血流量センサー("S"タイフ ゚,直径14mm,Transonic Systems Inc., NY, USA, 図2)を装着する
(図1)。妊娠中の子宮動脈は独自の拍動を持つため,触覚による把握は容易である。
- 手術は2時間程度で終了し,食欲の回復も良好である。妊娠期間,分娩状況および子牛生時体重に影響を与えることはない。
- 血流量の測定は,超音波血流量センサーを血流計(T106, Transonic Systems Inc.)に接続することによって行う。通常のパーソナルコンピュータを用いて,1秒ごとの血流量データを自動的に記録することが可能である。
- 本手法を用いることによって,種々の妊娠ステージにおける子宮動脈血流量を長期間にわたって測定できるものといえる
(図3,
表)。
成果の活用面・留意点
- 本手法は,特別な施設や手技を必要としないため,乳牛の子宮動脈血流量の長期間にわたる詳細な変動や定量的な測定に広く活用できる。
- 妊娠子宮の養分吸収量測定のためには,子宮静脈からの採血が必要であるが,現時点では採血に熟練を要するので,簡易な採血法の開発が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:胎子に対する養分供給を支配する内分泌要因の解明
- 予算区分:畜産対応研究[繁殖技術]
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)
- 研究担当者:西田武弘,安藤貞,細田謙次,石田元彦
- 発表論文等: Chronic observation of gravid uterine blood flow around parturition in Holstein cows. J. Dairy Sci. 83: 252, Suppl.1, 2000