放牧による生草摂取は育成子牛の消化管の機能と形態を発達させる
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要約
生草摂取した放牧育成牛は濃厚飼料給与の舎飼育成牛と比較し小腸及び大腸重量が大きい。また放牧育成牛の小腸及び大腸では、組織構造は筋層が舎飼育成牛より厚い傾向にあり、粘膜細胞活性を示すALP活性も高い傾向にある。
- 担当:草地試験場・放牧利用部・産肉技術研
- 連絡先:0287-37-7811
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
現在我が国の肥育では、濃厚飼料多給と粗飼料不足に起因する肉牛の消化管障害が問題となっている。これに対し放牧育成は、粗飼料源として生草を十分に摂
取するため消化管の発達に対して有効であると考えられる。しかし放牧による生草摂取が消化管に及ぼす影響について検討した報告は少ない。そこで、放牧によ
る生草摂取が消化管の形態及び機能におよぼす影響について検討を行った。
成果の内容・特徴
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4ヶ月齢交雑種(黒毛和種雄×ホルスタイン種雌)去勢牛6頭を,濃厚飼料を体重の1.4%に制限給与しオーチャードグラス乾草を不断給与した区(舎飼区、
n=3)と、ペレニアルライグラス草地で放牧した区(放牧区、n=3)の2区に分けた。放牧区には補助飼料として濃厚飼料は給与せず、生草摂取のみとし
た。7か月間飼養後屠殺し、各消化管重量を測定すると共に、組織学的、生化学的パラメーターの測定を行った。
- 放牧区の体重は舎飼区より軽いが、放牧区の4胃、小腸、大腸重量は舎飼区より重い
(表1)。
- 放牧区の空腸及び回腸では舎飼区より絨毛長は短いが、筋層は放牧区が厚い。放牧区の盲腸及び結腸では、粘膜層と筋層が舎飼区より厚い
(表2)。
- 粘膜細胞活性を示すALP(アルカリホスファターゼ)活性は粗飼料の物理的刺激に伴い上昇が認められるが、放牧区が舎飼区よ
り高い。タンパク質合成能を示すRNA/DNA比は空腸において放牧区が舎飼区より高く、盲腸では逆に舎飼区が放牧区より高い。細胞サイズを示す
Protein/DNA比は、空腸において放牧区が舎飼区より高い
(表3)。
成果の活用面・留意点
- 放牧育成牛の消化管発育及び機能に対する基礎的知見となる。
- 本成果は育成時の結果である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:放牧が肉用牛の消化管の機能・形態の発達に及ぼす影響
- 予算区分:総合的開発(自給飼料基盤)
- 研究期間:平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:山田知哉、中西直人、青木康浩、古賀鉄也(福岡県)
- 発表論文等:
1.Effects of Grazing on the Intestinal Morphology of Calves. Proceedings
of the 9th congress of the Asian-Australian Association of Animal Production
Societies. Asian-Aus.J.Anim.Sci:13(Suppl)B.277
2.第97回日本畜産学会講演要旨:13