花粉症を起こさないトールフェスク

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要約

イタリアンライグラスの細胞質を戻し交雑法を用いてトールフェスク(和名:オニウシノケグサ、俗称:ケンタッキー31フェスク)に導入し、花粉を出さない(雄性不稔)トールフェスクを開発した。このトールフェスクは、正常トールフェスクとの交配により種子が得られるが、その後代植物は花粉を出さない。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種工学研究室
  • 連絡先:0287-37-7553
  • 部会名:育種
  • 専門:育種・バイテク
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

現在、花粉症が大きな社会問題となっているが、その原因の一つはイネ科植物である。イネ科植物の中で、トールフェスク(学名:Festuca arundinacea Schreb、和名:オニウシノケグサ、俗称:ケンタッキー31フェスク)は、牧草地だけではなく「道路法面保護・緑化」や「公園緑地」などで、広く全国的に利用され、また、至る所で野生化している。トールフェスク花粉は、1971年に花粉症のアレルゲンとして報告されており、土留め目的で用いたトールフェスクが原因となって、花粉症が集団発生した例があり、トールフェスクの花粉対策が強く求められてきている。 今回、これらの要請に応えて、花粉を出さない(雄性不稔)トールフェスクの開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 図1 に示すように、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam)の細胞質を、戻し交雑によりトールフェスクに導入して、新規の「花粉を出さないトールフェスク」を開発した。今回育成した系統は、稔性花粉粒が少ないため開葯せず、花粉を全く飛散させない。
  • 表1 に示すように、これらのトールフェスクは、正常トールフェスクと同じ圃場で栽培することにより、採種することができる。多くの個体は種子収量が低いが、ナンリョウの半分程度の種子が得られる個体もあった。
  • 表2 に示すように、上記の方法で得られた後代は、全て花粉を出さなかった。

成果の活用面・留意点

今回開発した雄性不稔系統は、道路のり面や公園で利用できる「花粉症を起こさないトールフェスク」の母材として有望である。 この雄性不稔系統を利用するためには、種子収量向上のための育種操作が必要である。

具体的データ

図1 花粉を出さないトールフェスクの開発方法

表1 雄性不稔トールフェスク戻し交雑第7世代における一年目の種子収量

表2 雄性不稔トールフェスクの育成経過における染色体数と花粉の飛散

その他

  • 研究課題名:細胞操作による無花粉トールフェスクの開発
  • 予算区分 :新需要創出
  • 研究期間 :平6~12年度
  • 研究担当者:藤森雅博、小松敏憲、秋山典昭、間野 吉郎
  • 発表論文等:特許出願「無花粉型トールフェスク及び有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法(特願2000-25166)」