アルファルファにおけるアルミニウムストレスに応答した有機酸分泌の特性
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要約
アルミニウムストレスに応答し、アルファルファ幼苗が根から分泌する有機酸量には品種・系統間差が見られた。分泌量はストレス負荷後、一定の誘導時間を経て増加し、主な有機酸種は幼苗から生長するに伴いクエン酸からリンゴ酸に変化した。
- 担当:草地試験場・育種部・育種工学研究室
- 連絡先:0287-37-7553
- 部会名:育種
- 専門:育種
- 対象:牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
アルファルファは重要なマメ科牧草であるが、酸性土壌で生育障害を受けやすく耐性品種の作出が望まれている。酸性土壌における生育障害の主要因はpHの
低下に伴い土壌から溶出してくるアルミニウム(Al)イオンであると考えられており、植物にはAlストレスに応答してキレート性有機酸を分泌し、Alイオ
ンを無毒化してストレスを軽減している種のあることが知られている。アルファルファのAlストレスに応答した有機酸分泌については知見が少なく、この分泌
特性を明らかにすることによりAl耐性機構解明の端緒とする。
成果の内容・特徴
- 育成時にAl耐性により選抜されていない品種ナツワカバとタチワカバ、Al耐性で選抜された系統B13-Al4を水耕栽培し、幼根の伸長に及ぼすAlストレスの影響を調べた
(表1)
。伸長阻害はB13-Al4で一番小さく、品種・系統間差が見られた。
- 根長が200mm前後の幼苗をAlストレス負荷溶液(0.1mM AlCl3/0.5mM CaCl2、pH4.5)で24時間処理し、溶液中に分泌された有機酸を定量した
(図1)
。キレート作用を持つ有機酸としてクエン酸とリンゴ酸が検出され、根長当たりに換算したクエン酸の分泌量は、Alによる幼根の伸長阻害が一番小さかったB13-Al4で多いことが明らかとなった。
- 生長した植物体をAlストレス負荷溶液で処理し、溶液中の有機酸濃度を経時的に調べた
(図2)
。ストレス負荷後、10時間程度経過した後に急激な濃度上昇が見られ、一定の誘導時間を経て分泌量が増加するタイプであると考えられた。このタイプの分泌を行う植物としては、トウモロコシやライ麦が報告されている。
- 分泌される有機酸種は、幼苗ではクエン酸、生長した植物体ではリンゴ酸の割合が多く、生長に伴い変化した
(図3)
。
成果の活用面・留意点
- 遺伝子導入等による有機酸分泌能を増強した耐酸性品種作出時の基礎データとなる。
- 生長に伴い分泌される有機酸組成が変化することから、幼苗で見られたクエン酸分泌量とAl耐性の関係を全生育期間に適用するためにはさらに検討が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:アルミニウムストレスに応答するアルファルファ根中成分の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:秋山典昭、藤森雅博、小松敏憲