外来雑草イチビにおける押し葉標本のDNA解析法
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要約
外来雑草イチビの押し葉標本からのDNA抽出には種子を用いることが有効である。抽出し
たDNAのRAPD解析は困難であるが、多型を検出できる特異領域のプライマーを設計す
ることによって、PCRによるイチビの系統解析が可能である。
- 担当:草地試験場・飼料生産利用部・栽培生理研究室
- 連絡先:0287-37-7802
- 部会名:生産管理
- 専門:栽培
- 対象:雑草類
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、全国の飼料畑を中心に外来雑草が蔓延し大きな被害をもたらしている。侵入源は主に濃厚飼料の原料である輸入穀物とされているが、イチビについては
繊維作物としての栽培の歴史があり、外国からの侵入による発生数の増加の時期を明らかにすることは難しい。
成果の内容・特徴
- 押し葉標本から抽出したDNAは生葉から抽出したものに比べて損傷程度は大きいが、種子から抽出したDNAは損傷程度が比較的小さいため有効である
(図1)
。また、押し葉標 本の原型を保持する目的においても種子を用いることが有効である。
- 押し葉標本から抽出したDNAはサンプルによって損傷程度が異なると考えられるため、RAPD法のような非特異領域についてDNA増幅を行う方法の適用は困難である
(図2)
。
- 系統間変異が見られる特異領域を増幅するプライマーを設計することにより、PCRによる押し葉標本の系統解析が可能となる
(図3)
。この際に用いるプライマーの設計には、識別すべき系統間で変異が見られる領域について、多くの系統のシーケンスデータを蓄積す ることが必要である。
- 上記の方法により、押し葉標本を用いたDNA多型の検出が可能であり、全国に保存されている押し葉標本を用いてイチビの系統解析を行うことができる。
成果の活用面・留意点
- この方法は、他の外来雑草についても応用することができると考えられ、外来雑草の侵入実態を明らかにするために有効である。
2.押し葉標本の保存状態や採集後の処理により得られるDNAの損傷程度が異なることに留意する必要がある。また、種子をつけていない押し葉標本については適用できない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:外来雑草の環境適応特性の解明
- 予算区分 :経常研究、流動研究
- 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:黒川俊二、芝池博幸(農業環境技術研究所)、秋山永(農業環境技術研究所)渡辺修、吉村義則、尾上桐子