野草の低リン耐性とシバ及びススキ型草地におけるリンの循環特性

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要約

野草地ではきわめて低いリン肥沃度でもリンを有効に利用して乾物生産が行われている。このうちススキ型草地では枯死部と根茎部が大きなリン貯蔵プールとなってリン循環が行 われている。シバ型草地では枯死部、根部に加えて土壌表層のリンが寄与する。

  • 担当:草地試験場 環境部 土壌研 作栄研 生態部 生態シス研 草地生産基盤部 飼料基盤研 放牧利用部上席(現企連室)
  • 連絡先:0287-37-7558
  • 部会名:生産管理
  • 専門:草地土壌
  • 対象:野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

野草地では土壌中に有効態リンがほとんど見出されないような低養分条件においても、比較的高い乾物生産が維持されている。そこで、野草の低養分耐性機構を明らかにするため、野草地に おけるリン循環特性を調査する。

成果の内容・特徴

  • 土壌中の有効態リンが著しく低い条件においても、野草はリンを相当量吸収する (表1) 。とりわけ、アズマネザサ型草地やススキ型草地では、植物体リン濃度がかなり低いにもかかわらず、施肥を行っている牧草と同等か、それ以上の乾物量を維持していた。このことから、乾物生産に おけるリン利用効率の高さが、野草の持つ低養分耐性機構の一つと考えられる。
  • シバ型草地とススキ型草地のリン循環量は以下の特徴を示す。すなわち、シバ型草地では地上部のリン吸収量が土壌表層の有効態リン量に応じて変動したことから、シバ型草地のリン循環 に土壌リンが強く関与していると推察される (図1-1 ,図1-2 )。
  • 一方、ススキ型草地は土壌リンとの関係 (図1-2) よりもむしろ、根部(主に根茎)と枯死部に大きなリンのプールを持つことが、地上部のリン獲得に寄与する (図2) 。

成果の活用面・留意点

  • 野草中のリン濃度はファクトデーターベースとして公開する。
  • この成果は放牧を行っていない条件のものである。

具体的データ

表1 牧野草地の最大生育期における植物体リン量と土壌中の有効態リン濃度

図1-1 シバのリン吸収量と有効態リン

図1-2 ススキのリン吸収量と有効態リン

図2 シバ・ススキ型野草地における年間のリンの動き

その他

  • 研究課題名:草地のリン循環における牧野草中のリンの役割
  • 予算区分 :場内プロジェクト、経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成9~10~(11)年度)
  • 研究担当者:近藤 煕、高橋繁男、原田久富美、北原徳久、原島徳一、西田智子