傾斜放牧草地における土壌養分の偏在とその影響要因

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要約

傾斜放牧草地内での表層0~5cmの土壌中全窒素、可給態リン酸、交換性カリウム含量は緩傾斜、特に尾根で高く、偏在する。これら土壌養分の偏在には、施肥、放牧牛による影響要因のうち排ふん個数が最も影響を及ぼしている。

  • 担当:草地試験場・山地支場・草地土壌研究室、家畜飼養研室、作業技術研究室、山地草地研究室
  • 連絡先:0267-32-2356
  • 部会名:生産管理
  • 専門:土壌
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

環境保全的な傾斜放牧草地管理技術を確立する上で合理的な施肥を行うことが必要である。これまで本支場において、土壌養分の偏在と養分蓄積地点での減肥の 可能性を示してきた(草地飼料作研究成果最新情報第7、14号)。しかし、偏在の普遍性及び要因解明についての検討は少ない。そこで、本研究では上記報告 と異なる放牧草地において、土壌中全窒素、トルオーグ法による可給態リン酸、交換性カリウムの分布を調査し、分布特徴に及ぼす施肥と放牧牛による排泄ふん 個数、横臥・採食時間の影響、牛行動に及ぼす傾斜の影響について検討する。

成果の内容・特徴

  • 試験牧区 (図1) は8~25度の傾斜度を有し、北西、南東に尾根が広がり、中央部の北から南西に向かって谷となる。10m×10mメッシュ内の表層0~5cmの土壌中全窒素、可給態リン酸、交換性カリウム含量は緩傾斜、特に尾根で明らかに高く、土壌養分が偏在する (図2) 。
  • メッシュ毎の牛行動 (図3) の内、排泄ふん個数は尾根で著しく高く、最も顕著な傾向が見られる。横臥時間については斜面、谷で長い地点もあるが、北西の尾根で著しく長い。非横臥非採食時間についても同様である。採食時間は尾根で著しく長いということはない。
  • メッシュ毎の土壌養分含量及び傾斜度と影響要因の関係について回帰分析を行った (表1) 。三養分ともに排泄ふん個数、牛横臥時間と有意に相関があり、排泄ふん個数との相関が最も高い。推定肥料散布量とはカリウムを除き相関が低い。また、傾斜 度が低いほど有意に排泄ふん個数が多く、横臥時間、非横臥非採食時間が長い。これらより、傾斜放牧草地での土壌養分の偏在には、放牧牛が傾斜の緩い場所へ 集まりやすく、排泄することが強く影響を及ぼしていることが示される。

成果の活用面・留意点

  • 傾斜放牧草地において、排泄ふん個数が多い場所での土壌中窒素、リン酸、カリウムの偏在が予測でき、養分分布特徴に対応した合理的施肥を行うための基礎資料となる。
  • 傾斜角以外の地形要素については別途検討する必要がある。

具体的データ

図1 試験牧区の概要

図2 メッシュ毎の土壌養分の分布

図3 メッシュ毎の牛行動の分布

表 メッシュ毎の土壌養分含量及び傾斜度と影響要因の関係

その他

  • 研究課題名:傾斜放牧草地における過剰養分資源の動態と制御に関する基礎研究
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成10年~11年度)
  • 研究担当者:山田大吾、山本博、小島誠、木戸恭子、梅村和弘、玉城勝彦、瀬川敬、斉藤吉満
  • 発表論文等:[1]傾斜放牧草地における過剰養分資源の動態と制御-土壌の理化学性に及ぼす施肥と家畜排泄物の影響-、土壌肥料学会関東支部大会講演要旨、p11、1999、[2]傾斜牧草地における家畜-土壌-植物のつながりと解析(2)、第55回日本草地学会講演要旨、p380-381、2000