牛ふん尿スラリー多量施用圃場における大腸菌の消長

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要約

牛ふん尿スラリーを多量施用した圃場における大腸菌の土壌中での消長を平板法で調べた。大腸菌は、数ヶ月以上土壌中で生残している。また、降雨によって土壌の下層へ移動する場合もある。

  • 担当:草地試験場・生態部・土壌微生物研究室
  • 連絡先:0287-37-7227
  • 部会名:生産管理
  • 専門:環境保全・土壌
  • 対象:微生物・乳用牛
  • 分類:指導

背景・ねらい

昨今、子供や老人等体力の十分でない者を中心に病原性大腸菌O157等による集団食中毒事件が頻発しており、家畜ふん尿の圃場還元に際して、ふん尿に由来 する大腸菌汚染が危惧されている。そこで、牛ふん尿スラリーの有効かつ安全な処理・利用のために、牛ふん尿スラリーを多量に施用した圃場における大腸菌の 消長を調査した。

 

成果の内容・特徴

  • 土壌中に低密度で存在する大腸菌を検出するためには高濃度の土壌懸濁液を接種する必要がある。しかし、高濃度の土壌懸濁液を平板塗沫法で寒 天平板へ塗布した場合、平板上での大腸菌のコロニー形成は抑制される。土壌懸濁液を溶解した寒天培地に混ぜる混釈法、あるいは土壌懸濁液を1時間静置し、 その上清部分を寒天平板へ塗布することによって、土壌懸濁液中の大腸菌を正確に検出できる (図 1) 。
  • 牛ふん尿スラリーを標準施用量より過剰な約20t/10aの割合で圃場へ散布し、土壌中の大腸菌数を経時的に調査した。3回の施用試験(表面施用、耕起せず作付なし)の結果、大腸菌は数ヶ月以上にわたって検出され続け、また、降雨によって 下層へ大腸菌の移動の起こることが認められた (図2) 。
  • ソルガムの作付けは大腸菌の消長に影響を及ぼさなかった。土壌中の大腸菌数は、土壌の乾燥によって低下しやすく、そのためには耕起が有効であった。

成果の活用面・留意点

  • 家畜排泄物に由来する大腸菌汚染を防止するための資料として活用できる。
  • 本研究は一般大腸菌について調査したものであり、病原性大腸菌について調査した結果ではない。また、本研究でのスラリーは、牛舎より排出されたばかりのものであり、またその施用量は、大腸菌生残性調査という目的のために、標準施用 量より過剰となっている。
  • 牛ふん尿圃場還元による大腸菌汚染を抑止するためには、標準施用量を守り、堆肥化等によって、施用ふん尿中の大腸菌密度をできるだけ低く抑えることが必要である。

具体的データ

図1 土壌中の低密度大腸菌の選択培地

図2 牛ふん多量施用圃場における大腸菌の消長

その他

  • 研究課題名:ふん尿リサイクルにおける大腸菌の消長
  • 予算区分 :現場即応研究〔病原性大腸菌〕
  • 研究期間 :平成12年度(平成9年~11年度)
  • 研究担当者:大友 量、湊 啓子(道立畜試)、斎藤雅典
  • 発表論文等:
    牛ふん尿スラリー施用圃場における大腸菌の消長、土肥要旨集、45巻、62、1999
    土壌粒子が平板培養法による大腸菌の検出感度に及ぼす影響、土と微生物、54巻2号、174、2000