二段発酵によるイタリアンライグラスロールベールサイレージ品質の安定化

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要約

イタリアンライグラスロールベール・ラップサイレージを固定サイロに解体・細断し再貯蔵することによって,pHを低下させ発酵品質を安定化させることができる。また,再貯蔵後の貯蔵期間を60日以上とすることによって,固定サイロ開封後の好気的変敗を抑制できる。

  • 担当:草地試験場・資源循環研究グループ
  • 連絡先:0287-37-7805
  • 部会名:飼料利用
  • 専門:動物栄養
  • 対象:牧草類
  • 分類:普及

背景・ねらい

省力的なロールベール・ラップサイレージ(以下ロールベール)体系は,全国的に普及しているが,個々のロールベールに品質ムラがあり,TMRの基礎飼料と しては使いづらい点が指摘されている。また,ストレッチフィルムは移動や保管中にダメージを受けやすく,それによる気密性の低下は品質劣化やカビ汚染につ ながりかねない。そこで,これらロールベール体系の欠点を補完し,その特徴を最大に活用する技術として,ロールベールを圃場における短期的な一次貯蔵と位 置づけ,牛舎近くの固定サイロに再貯蔵して利用する二段発酵調製システムを開発した。

成果の内容・特徴

  • 水分含量が65%~50%の範囲内のイタリアンライグラスロールベールを市販のロールベールシュレッダを用いて10cm程度に細断して,荷重を加えることができる固定サイロに再貯蔵して品質を安定化させる技術である。
  • 乳酸発酵が十分に行われた高品質なロールベールを再貯蔵すると,pHが上昇する等の悪影響はない (図1-A) 。一方,乳酸発酵が不十分であったロールベールを再貯蔵すると,乳酸発酵が誘起されpHが低下する (図1-B) 。また,水分が60%以上のロールベールなどでは再貯蔵後のpH低下が緩慢になることがある。その場合は,再貯蔵時に配合飼料を原物あたり10%添加すると効果的にpHを低下させることができる (図1-C) 。
  • 低pHは貯蔵中の酪酸含量の上昇を抑制する (図2) 。一方,酢酸含量は再貯蔵後緩やかに上昇するが,それに伴って酵母が減少し (図2) ,開封後の発熱が抑制される (図3) 。また,ロールベールは解体時にカビがサイレージ1gあたり104個程度存在する場合があるが,再貯蔵2日目以降は検出限界以下となる (図2) 。

成果の活用面・留意点

  • ロールベールをTMRのベースとする場合やロールベールの発酵品質が安定していない場合の対策技術として活用できる。
  • 再貯蔵時には,踏圧や重石によって貯蔵密度をできるだけ高め,気密性を十分に確保する必要がある(地下角形サイロのような開口部が狭い縦型タイプを推奨)。

具体的データ

図1 ロールベールサイレージの固定サイロへの再貯蔵がpHに及ぼす影響

図2 再貯蔵期間が有機酸含量、微生物数に及ぼす影響

図3 再貯蔵が開封後の発熱に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:二段発酵を活用した高品質サイレージ調製技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成11年~12年)
  • 研究担当者:河本英憲,早坂貴代史,加茂幹男,張建国,佐竹康明(愛媛県畜産試験場),市戸万丈,天羽弘一,喜田環樹,藤田泰仁,田中治,蔡義民
  • 発表論文等:ラップサイロから気密サイロへの再貯蔵がサイレージ発酵に及ぼす影響,日本草地学会誌,46巻別号,246-247,2000