わが国における半自然草原の分布とその自然立地特性

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要約

わが国におけるまとまった面積の半自然草原は、宗谷丘陵および阿蘇地域に偏在分布し、火山性の自然立地条件と関連が深い。また、緯度・標高・表層地質・土壌・地形分類などのデータから、半自然草原の存在確率が推定可能である。

  • 担当:草地試験場・草地生産基盤部・立地計画研究室
  • 連絡先:0287-37-7246
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:生態
  • 対象:野草類
  • 分類:行政

背景・ねらい

かつて全国土面積の1割以上を占めていたわが国の半自然草原は、現在大幅に減少しているが、絶滅危惧種を含む多くの草原性生物の生息域である半自然草原 (ススキ・シバ・ササが優占する半自然草原)の分布実態を把握し、保全することが急務である。そこで、メッシュデータを用いた解析により、わが国における 半自然草原の分布状況を把握し、自然立地条件との関連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • まとまった面積の半自然草原は、北海道の宗谷丘陵、九州の阿蘇地域に偏在分布しており、わが国において現存する半自然草原の全面積は、耕作放棄地や伐採跡地などの一時的な草原を除くと、全国土面積の約1.6%にまで減少している。
  • わが国における半自然草原の分布は表層地質が火山性堆積物や火山性岩石の地域、土壌が黒ボク土の地域、あるいは火山地や火山山麓などの地形分類の地域、といった火山性の自然立地条件と関連が深い (表1) 。
  • 半自然草原の存在確率(ある自然立地条件において半自然草原が存在する確率)を草原のタイプ別に推定することが可能である。例えば、 (式1) では、緯度、標高等の値を変数に代入することにより暖温帯におけるススキ草原の存在確率が算出できる。

成果の活用面・留意点

  • 存在確率に応じたより効率的な半自然草原の保全対策の策定など自然保護行政等への活用。
  • 本成果では、放牧条件等、社会・経済的要因は考慮していない。本成果の信頼度は、使用したメッシュデータの精度・スケール等に依存するため、比較的狭い範囲において活用の際は注意を要する。

具体的データ

表1 半自然草原の分布が有意に多い(少ない)自然立地条件

式1 暖温帯ススキ草原の存在確率pを算出する式

その他

  • 研究課題名:牧野・草原の変遷に伴う景域構造の変化と生物多様性の解析・評価
  • 予算区分 :環境研究〔貿易と環境〕
  • 研究期間 :平成12年度(平成8年~12年度)
  • 研究担当者:小路 敦、須山哲男、佐々木寛幸、神山和則
  • 発表論文等:Distribution and site conditions of semi-natural grassland in Japan. Proceedings of the VI International Rangeland Congress, 312~313, 1999.