属間雑種フェストロリウム草地の放牧利用特性と栄養価

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

移植により造成し、放牧利用した属間雑種フェストロリウムの生産量と採食量はトールフェスクより高く、栄養価はペレニアルライグラスとトールフェスクの中 間にある。フェストロリウムは強放牧すると衰退につながる可能性が認められるが、適正放牧すれば被度と茎数は他2草種より良好に維持される。

  • 担当:草地試験場・放牧利用部・放牧飼養研究室
  • 連絡先:0287-37-7809
  • 部会名:草地・永年草地・放牧
  • 専門:飼育管理
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

集約放牧は高い生産性が達成できるが、主要な寒地型牧草は関東以南では夏枯れを起こしやすく、適用地域が限定されている。属間雑種フェストロリウムは、 耐暑性や耐干性が強く、かつ栄養価も高い新しい牧草として注目されており、本草種の集約放牧での放牧適性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 移植により造成したフェストロリウム(イタリアンライグラス×トールフェスク:FL) と播種造成したペレニアルライグラス(ヤツナ ミ:PR)及びトールフェスク(ホクリョウ :TF)草地に放牧強度の3水準(HH区:肉用育成牛延1,600頭/ha、H区:1,200頭、M 区:800頭)を設け、集約放牧した。
  • 現存量は、4~5月はFLが多く、6月以降はほぼ同程度で推移した。採食利用率は、各 放牧回次ともPRが60~80%とFLとTFより高く、FLは4月はTFより低かったが、5 月以降は40~60%程度で、TFとほぼ同じ推移を示した (図1) 。
  • FLの被度は、HH区、H区では年次ごとに減少したが、M区では比較的安定しており、 H区以上の強度の放牧では衰退する傾向がある (図2) 。
  • 利用2年目の草地生産量は、FLはha当たり7.7tでPRと同程度で、TFの6.0tより高 かった。FLの総採食量も生産量と同じ傾向があった。
  • 茎数は、各草種とも夏から秋に減少し、翌春には回復する傾向を示した。造成翌春にはT FとPRが多かったが、次第に減少したのに対して、FLは利用3年目の秋に減少したもの の、それまでは増加傾向を示した (図3) 。
  • 人工消化率は、3草種とも春に高く、6~8月に低下し、秋に回復する傾向を示し、いず れの時期も、PR>FL>TFであった (図4) 。

成果の活用面・留意点

  • フェストロリウムを放牧利用する際の基礎資料とする。
  • 本試験で用いたフェストロリウムは種子親、花粉親とも数品種から造成された数系統を混 植し、北関東で放牧利用した調査結果である。

具体的データ

図1 現存量と採食利用率の推移

図2 対象牧草の被度の推移

図3 H区の茎数と茎数割合の推移

図4 人工消化率の推移

その他

  • 研究課題名:集約放牧におけるフェストロリウム等新型牧草の利用技術
  • 予算区分 :畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)
  • 研究担当者:安藤 哲・大槻和夫・栂村恭子
  • 発表論文等:放牧利用した属間雑種フェストロリウム草地の栄養特性、日草誌45(別):14~15,1999.