ストレス負荷牛における末梢血好中球機能の寒冷と暑熱に対する反応
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要約
副腎皮質刺激ホルモン投与によりストレス状態にある牛では、末梢血好中球機能は低下するが、この低下は寒冷時には抑制され、暑熱時には助長される。
- 担当:草地試験場・放牧利用部・衛生管理研究室
- 連絡先:0287-37-7812
- 部会名:永年草地・放牧
- 専門:生理
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
放牧家畜の損耗性疾患の発症には、入牧時の輸送や新しい群構成によるストレスに加え、放牧中の気象環境の急変などの自然環境要因が誘因となることが考え
られるが、その詳細については不明である。そこで、環境温度の変化がストレス状態にある牛の生体防御機能に及ぼす影響を知るため、その指標の一つである末
梢血好中球機能について検討した。
成果の内容・特徴
- 15℃で馴致させた黒毛和種去勢育成牛3頭とホルスタイン種去勢育成牛6頭を、それぞれ寒冷と暑熱に感作し、同時にストレス状態を作出するため副腎皮質刺激ホルモンを3日間投与した。末梢血好中球の機能活性は化学発光(CL)法で測定した。
- 末梢血好中球CL能は、副腎皮質刺激ホルモン投与によって低下する傾向がみられ、ストレス時には好中球機能が低下することが示された
(図1
、図2
)。
- CL能の低下は、-5℃の寒冷感作では15℃の場合より遅延し、投与終了2日後には試験開始前よりも高い値に達したことから、寒冷刺激はストレス状態にある牛に対し、好中球機能を高める方向に作用することが明らかとなった
(図1)
。
- 35℃の暑熱感作では、CL能は試験開始前のおおよそ13%にまで低下し、副腎皮質刺激ホルモン投与終了後も試験開始前のレベルには回復しなかったことから、暑熱刺激はストレス状態にある牛に対し、好中球機能を低下させることが明らかとなった
(図2)
。
- ストレス状態にある牛の末梢血好中球機能は、寒冷と暑熱では異なる反応を示したことから、入牧後にストレスを多く受けた牛では、寒冷よりむしろ暑熱刺激が末梢血好中球機能の抑制を引き起こし、細菌感染症など損耗性疾病の発生を助長させる可能性が考えられる。
成果の活用面・留意点
- 放牧環境ストレスと生体防御能との関連性を知る上での基礎資料となる。
- 副腎皮質刺激ホルモン投与による人為的なストレス状態における結果である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:放牧環境が家畜の生体防御機能に及ぼす影響の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成12年度(平成8年~12年)
- 研究担当者:石崎 宏、花房泰子、仮屋喜弘
- 発表論文等:Effects of peripheral blood polymorphonuclear leukocyte function and blood components in Japanese Black steers administered ACTH in a cold environment. J.Vet.Med.Sci. 61(5), 487-92. 1999.等