渦相関法による採草地上のCO2フラックスの季節的変動

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要約

寒地型牧草の採草地における日中のCO2フラックスは、季節毎の牧草の生育を良く反映する。牧草生育期間中の日収支は、数百mg~数g/m2/日のオーダーでCO 2吸収源となっている。

  • 担当:草地試験場・草地生産基盤部・飼料基盤管理研究室
  • 連絡先:0287-37-7209
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:農業気象
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

永年利用される草地は、地下部が地上部に比べて大きく、また、地下部から土壌への有機物移行量も大きい特徴を持つことからCO 2の吸収源として働くことが期待されている。そこで、CO2乱流輸送量を直接的に測定できる渦相関法により、オーチャードグラス、トールフェスク、シロクローバが混播された0.5haの採草地上において地上1.3m地点のフラックスを測定し、その季節的変動の特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 春季:牧草群落の発達にともない次第に日中の平均CO2吸収速度(-値)は、2.5g/m2/hまで増大したが、4月末のトールフェスクの出穂とともにと停滞する。1番草の採草(5月11日)後は、植生の回復状態を反映し、日中の吸収速度は急激に増大する (図1) 。
  • 夏季:2番草の採草(6月21日)以後、シロクローバの回復の遅れにより、日中の吸収速度の増加は比較的緩やかになる。日平均気温が25°Cを越えた時期には夏枯れにより牧草の生育は停滞し、日中の平均吸収速度は、1.0~1.6g/m2/h程度まで減少する (図2) 。
  • 秋季:日中の吸収速度は、春季、夏季と比較して高い傾向があったが、牧草生育の停滞とともに低下し、同時に夜間の放出量(+値)も次第に増大する (図3) 。
  • 採草までの日中の平均CO2吸収量は、17.9~22.5g/m2/日となり、その41~52%が牧草地上部へと固定される (図4) 。また、春(5月23~24日)、夏(8月7~8日)、秋(10月11~12日)の日収支(g/m2/日)は、それぞれ-0.64、-1.63、-5.12となり、いずれも数百mg~数g/m2/日のオーダーでCO 2吸収源となっている。

成果の活用面・留意点

  • 寒地型牧草地の炭素循環に関する基礎データとなる。
  • 前年(1998年)の秋に造成後、利用1年目の採草地に関するデータである。

具体的データ

図1 春季のCO2フラックス

図2 夏季のCO2フラックス

図3 秋季のCO2フラックス

図4 採草までのCO2吸収量と地上部固定量

その他

  • 研究課題名:気候変動予測のための大気-草地相互作用モデルの開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成9~11年度)
  • 研究担当者:柴田昇平・北原徳久・西田智子
  • 発表論文等:渦相関法による採草地上のCO2フラックス、日草誌第46巻(別)400-401