都市住民による酪農地帯の景観評価

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要約

都市住民は酪農地帯の景観を全体的情景>個別的情景>景色内存在物の順に評価する。広々感があり,整然として,建造物が風景と調和し,花や林などが存在する景観が良好と評価される。また酪農地帯の景観評価が数量的に行える景観評価式を初めて提示した。

  • 担当:草地試験場・草地生産基盤部・草地機能開発研究室
  • 連絡先:0287-37-7208
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:農村整備・環境保全
  • 対象:牧草類・野草類
  • 分類:行政

背景・ねらい

食料・農業・農村基本法において,農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮が唱えられている。畜産,酪農地帯においても景観管理,保全が重要視されて いる。そこで,今後の酪農地帯の景観保全・整備の方策に資することを目的として,土地利用や周辺の環境が景観保全に果たす役割を明らかにする。とくに酪農 地帯の景観を構成する要素およびその重要度を都市住民の評価から明らかにする。

 

成果の内容・特徴

  • 栃木県北部酪農地帯の景観写真に対するアンケート調査データ(電話帳から無作為に抽出した宇都宮市民1,000名に,良または否定的評価を 受けると思われる景観写真10枚を掲載した用紙を送付し,各々の写真に対する評価を求めた。回答数は532名)から,景観の構成要素とその貢献度を数量的 に解析した。
  • 景観構成要素を写真全体の持つ情景とした全体的情景要素,写真内に含まれる個別的情景要素および写真にある景色内存在物要素の3つに類別すると,都市住民は全体的情景>個別的情景>景色内存在物の順に景観を判断する傾向がみられる (表1) 。
  • 景観を良と判定する景観要素は,全体的情景の中では,広々さ,整然さが挙げられる。また,個別的情景の中では,建物(畜舎)が景観に溶け込み周りの風景に調和していること,さらに景色内存在物では,花,林,山等の存在が挙げられる (図1) 。
  • 各景観要素のカテゴリ・スコアから,各景観の総合値である景観評点が算出できる景観評価式を作成した (図1) 。都市住民を対象とすると,景観評点の値が-0.200以上になれば90%以上の割合でその景観は良好と判断されるとともに,その景観の良さの程度を数量的に表示できる (図2) 。

成果の活用面・留意点

  • 酪農地帯の景観管理の基礎資料となる。特に地域内にみられる放置された農機具,堆肥,ゴミ,雑草などの撤去の必要性の論理的根拠として,環境整備指針になる。
  • 本結果は北関東酪農地帯における景観構成要素の解析結果である。

具体的データ

表1 数量化II類による景観の良否に及ぼす景観要素に関する解析結果

図1 都市住民による酪農地帯の景観評価における景観要素の貢献度と景観評価式

図2 景観評価式による評価事例

その他

  • 研究課題名:台地畑作農村における景観構造と快適性との関係の解明
  • 予算区分 :総合的開発研究(貿易と環境)
  • 研究期間 :平成12年度(平成8年~12年)
  • 研究担当者:梨木 守・大谷一郎・尾上桐子・北川美弥
  • 発表論文等:(1)栃木県北部酪農地帯における飼料畑を含む景観に対する住民の評価基準.日草誌 45巻別号, 32-33(1999) (2)草地の景観に対する評価あれこれ.畜産コンサルタント 418号, 43-47(1999)