脳波反応による草地景観評価―動画ビデオの利用
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要約
草地景観を動画ビデオで呈示し、脳波を測定すると快適感の高い景観でα波の出現量が多くなるとともに、聴覚野がある側頭部のβ波の出現割合が高くなる。動画ビデオによる景観呈示は静止画に比べて、より自然な呈示法であると評価される。
- 担当:草地試験場・草地生産基盤部・草地機能開発研究室
- 連絡先:0287-37-7208
- 部会名:永年草地・放牧
- 専門:農村整備、環境保全
- 対象:牧草類、野草類
- 分類:研究
背景・ねらい
草地景観の快適性評価は、写真等の静止画を被験者に呈示し、アンケートにより評価されることが多い。しかしながら、静止画では音声や動きの情報が欠落
し、また、アンケート評価は心理面への影響を言語を介して間接的に調査することになる。そこで、臨場感の高い景観映像を再現することが可能な動画ビデオに
より景観を呈示し、音声や動きの情報が評価に及ぼす影響を検討した。
成果の内容・特徴
- 草地試験場職員6-7名を対象に景観呈示法(音声付き動画、音声無し動画、静止画)を変えて脳波反応を検討し、あわせて形容詞対によるアンケート評価を行った。
- 各種の景観を音声付き動画(動画ビデオ)により被験者に呈示し、呈示前後の閉眼時のα波出現量を比較した。その結果、ア
ンケート評価で快適性が高いと回答された景観では映像呈示直後のα波(心身とも落ち着いた時に発生する)の出現量が多い傾向が認められ、眺めることにより
精神的に落ち着く心理的作用が認められる
(図1)
。
- 映像呈示中のβ波(大脳が活動している部位に多くみられる)の出現量は、動画ビデオでは他の呈示法よりも側頭部において出現割合が高い。側頭部には聴覚野が存在することから、音声情報の処理が盛んに行われており、映像に加わった自然音が心理面に作用したと考えられる
(図2)
。
4.アンケートによる評価において、「美しい―醜い」、「自然的な―人工的な」等の形容詞対で動画ビデオが静止画および音声無し動画より、美しく、かつ自
然な感じであると評価される傾向が認められ、牛、植物の動きや自然音が臨場感を高めて評価にも影響を及ぼしたと考えられる
(表1)
。
成果の活用面・留意点
- 草地景観を動画ビデオによって呈示し、脳波反応を解析する方法は、景観が持つ快適性の相対的な比較に活用できる。
- 現地で景観を見た場合には、周囲の環境や臭い等の他の因子も脳波に影響する可能性があるため、動画ビデオで呈示したときの反応と異なることも考えられる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:草地景観の感性的、心理的評価 動画ビデオによる脳波反応からみた草地景観の評価
- 予算区分 :経 常・場内プロジェクト
- 研究期間 :平成12年度(平成11年~12年、平成12年)
- 研究担当者:大谷一郎、梨木 守、北川美弥
- 発表論文等: