食肉の赤色度、退色割合および脂質酸化度の簡易判定法

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要約

食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)の流通や小売り段階において重要な鮮度の指標である赤色度、退色割合、脂質酸化度を可視から近赤外域の分光値を用いて非破壊で短時間に測定することができる。

  • キーワード:食肉、肉色、脂質酸化、鮮度、判定、食品品質、家畜類
  • 担当:価研究室
  • 連絡先:0298-38-8690
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

食肉は時間の経過とともに退色し、脂質は酸化して酸化臭を発するようになる。これら肉色の変化や脂質酸化の増加は流通や小売り段階において大きな 問題である。現在、食肉の鮮度は視覚や嗅覚で判定されており、より科学的な評価法が求められている。食肉の鮮度、特に脂質酸化の客観的な測定には多くの処 理と時間を要するため、現場では、非破壊で短時間に鮮度を判定できることが必要である。
そこで、食肉の鮮度の指標である赤色度、退色割合、脂質酸化度を可視から近赤外域の分光値を用いて非破壊で短時間に測定する方法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 分光分析計に肉断面測定用の光ファイバーを取り付けて、保存中の食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)について400~1100nm(可視光~近赤外光域)に おける拡散反射率を測定し、log(1/拡散反射率)として記録し、カット肉の持つ不均一な影響を軽減するためにその対数変換値(近似的な吸光度)を2次 微分した。
  • 分光分析計で測定した部位について、保存中における食肉の鮮度の変化を最も良く表す赤色度(a*)、メトミオグロビン形成割合、脂質酸化度(2-チオバルビツール酸反応物質:TBARS)を実験室で常法により分析した。
  • 重回帰式を用いて可視および近赤外域の分光値から食肉の赤色度、メトミオグロビン形成割合、脂質酸化度を最も良く表す検量線を作成した(表1)。
  • 消費者は牛肉表面のメトミオグロビン形成割合が30~40%になると購入しなくなり(Greeneら, 1971)、またTBARS値が約0.5mgMDA/kg肉以下では酸化臭を検出できないと報告されている(Gray and Pearson, 1987)。これらの基準(赤色度は関係式より推定値)を検量線によって得られる測定値に当てはめて、例えば牛肉であればa*は16以下、メトミオグロビ ン形成割合(図1)は30%以上、TBARS値(図2) は0.6mgMDA/kg肉以上のいずれかであれば牛肉の鮮度が落ちていることを判定することができる。また、a*は16以上で、メトミオグロビン形成割 合は30%以下で、TBARS値は0.6mgMDA/kg肉以下であれば牛肉の鮮度が良いことを判定することができる。

成果の活用面・留意点

  • この判定法を用いることにより、食肉の赤色度、退色割合、脂質酸化度が非破壊で短時間(約10秒)かつ正確にわかるので、流通および販売時における食肉の鮮度の客観的な評価に役立つ。
  • 本成果の鮮度の指標には微生物学的変化と核酸関連物質の分解割合(K値)を含めていない。

具体的データ

表1.各食肉の赤色度(a*)、メトミオグロビン形成割合、脂質酸化度(TBARS)における検量線と予測の結果

 

図1 本成果の検量線による牛肉のメトミオグロビン形成割合の測定値と常法による分析値との関係

 

図2 本成果の検量線による牛肉の脂質酸化度(TBARS)の測定値と常法による分析値との関係

 

その他

  • 研究課題名:食肉の品質評価法と機能性向上技術の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:三津本 充、佐々木啓介、村上 斉(中小家畜代謝研究室)
  • 発表論文等:1)三津本ら (2001) 特許出願2001-311912.
                      2)Mitsumoto et al. (2001) 10th International Conference on Near-Infrared Spectroscopy. Abstracts. P5-9.