豚における近交度の精密な評価法
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要約
近交度の異なる雄の混合精液を雌豚に人工授精し、その産子についてDNAマーカーによる親子鑑別をおこなうことにより、母体の影響を除いて子豚の近交度を正確に評価ができる。
- キーワード:近交、DNAマーカー、親子鑑別、混合精液、豚、育種
- 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・家畜育種研究室
- 連絡先:0298-38-8625
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
豚の近交退化現象として、繁殖性や初期の発育に負の効果があることが示されている。しかし、これらの形質は環境の影響を受けやすく、真の遺伝的効 果を把握することが困難である。そこで、初期の発育に大きく影響する母豚の胎内環境および哺育能力の影響を制御して、近交度が子豚の生存性や初期発育に及 ぼす影響を正確に評価する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 交配する雌豚に対し、全きょうだい雄と血縁のない雄の精液を混ぜた混合精液を人工授精し、同腹で近交度の異なる産子を生産する。産子の近交係数は それぞれ25%(近縁産子)と0%(遠縁産子)となる。産子はDNAマーカーにより父親を判定する。近交度の評価に、混合精液により生産された産子を用い ることで、母豚の影響が制御され、実験にともなう誤差を減らすことができる(図1)。
- デュロック豚では、1ヶ月齢、2ヶ月齢の体重は遠縁産子が近縁産子より大きい。2ヶ月齢の血液成分特性値では遠縁産子にくらべ近縁産子の尿素態窒素、アルブミン濃度、総タンパク質濃度が低く、コレステロール濃度が高い(表1)。
- 混合精液を用いて母体環境の影響を少なくすることより豚の近交の影響が精密に評価できる。
成果の活用面・留意点
- 母体環境の影響を除いた精密なヘテローシスの評価にも利用できる。
- 組み合わせ検定に利用することにより、検定で飼養する雌豚の数を減らすことができ、検定コストの削減につながる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:個体、集団レベルにおける近交退化発現機構の解析
- 予算区分:パイオニア(近交退化)
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:石井和雄、古川 力、佐々木修、武田尚人