マーカー情報を利用した近交回避

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要約

血縁情報とマーカー多型情報を利用して、遺伝的類似度をより正確に推定することによって、血縁的に最大限回避した場合よりもさらに近交を低く抑えることができる。

  • キーワード:近交・血縁、マーカー、全家畜、遺伝資源、育種
  • 担当:畜産草地研・育種繁殖部・家畜育種研究室
  • 連絡先:0298-38-8625
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

安定した畜産物の生産のために均質な家畜が求められている一方で、動物の集団内で遺伝的な均一化が進むと、近交退化による繁殖性、強健性の減少 や、遺伝的改良効率の減少を引き起こす可能性が高くなる。このため、個体の持つ配偶子同士が遺伝的に同一である可能性を示す値(遺伝的類似度)を正確に推 定し、近交を低く抑えることが重要である。そこで、マーカー情報を用いて遺伝的類似度を正確に推定することで近交を回避する選抜法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 親子のマーカー多型の組み合わせにより、遺伝子の由来確率を修正して遺伝的類似度を評価する方法(以下修正法という)は、従来の血縁関係による評価に比べて、配偶子間の遺伝的類似度の実現値との相関が高い。(表1)
  • 集団に選抜が加わった場合、QTL近傍では配偶子間の遺伝的類似度の実現値は従来の近交係数よりも高くなるが、修正法ではこの偏りの一部を評価できる。(表2)
  • 修正法による評価値をもとに選抜することによって、血縁的に最大限回避した場合よりもさらに近交を低く抑えることができる。(表3)

成果の活用面・留意点

  • 集団の変異性や個体の能力の評価の正確性を高め、遺伝資源集団の維持・評価を効率的に行うことが可能となる。
  • マーカー情報の取得コストが、近交抑制の利益に対して低い必要がある。

具体的データ

表1 近交係数と修正法による評価値の実現値との相関

 

表2 腹内1/3選抜を行った場合のQTLおよびその近傍の実現値と評価値

 

表3 修正法の評価値による腹内1/3選抜と無作為選抜の近交度の実現値

 

その他

  • 研究課題名:ゲノム情報を用いた近交退化制御技術の開発
  • 予算区分:パイオニア(近交退化)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:武田尚人、佐藤正寛、佐々木修、石井和雄、古川力、峰沢満、高橋秀彰
  • 発表論文等:1)Takeda,H.et.al(2000)From J.Lush to Genomics: Vision for Anim. Breed. Genet.172
                       2)Takeda,H.et.al(2000)5th Glob. Conf. on Cons. of Domestic Anim. Genet. Res.