バクテリオシンSE-K4の構造と生成及び生産に関わる遺伝情報

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

乳酸菌Enterococcus faecalis K-4株はリステリア菌等に活性を示す43個のアミノ酸残基からなるバクテリオシンSE-K4を生産する。その生成機構はプラスミドpEK4Sで制御され、発現は温度の影響を大きく受ける。体、フェノール性三量体および一部フェノール残基を含むリグニン重合体のベンジルエーテル結合は嫌気的に解裂される。

  • キーワード:乳酸菌、バクテリオシン、リステリア症、加工利用、細菌
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・消化管微生物研究室
  • 連絡先:0298-8-8660
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

乳酸菌が生産するバクテリオシン類は安全性が高く,抵抗性菌株の出現も少ない抗菌性物質として、食品産業への利用に世界的に大きな期待が寄せられ ている。本研究課題では,先にタイ国のサイレージから分離・同定した乳酸菌Enterococcus faecalis K-4株の生成するバクテリオシンSE-K4の構造を解明するとともに、生成機構及びその有効利用のための生産条件を検討した。

成果の内容・特徴

  • 乳酸菌 E. faecalis K-4株の生成するEnterocinSE-K4(分子量5356.2)は43個のアミノ酸残基からなるクラス2-ペディオシン群のバクテリオシンで、 Enterococcus属菌の他に、枯草菌、酪酸菌、リステリア菌に活性を示し、熱安定性で、弱酸性から中性域で安定な活性を発現する。
  • SE-K4の構造遺伝子は合計10個のorf(図1)を持つプラスミドpEK4S(35kb)のorf 6に座乗し、免疫に関与しているorf 9 及び機作不明なorf 7と別種のバクテリオシンの生産に関与しているorf 8 とともにユニットで働いている。
  • SE-K4は、43°C下で非イオン性表面活性剤Tween80を添加して培養すると、見掛けの培地内濃度が37°C下でTween80非存在下培養時の約20倍に増加する。これは高温下における生産促進とTween80による菌体表面への吸着抑制に起因する(図2)。
  • 乳酸菌 E. faecalis K-4株からプラスミドpEK4L(40kb)を欠落させたM-6株は、親株と比較して約20倍のSE-K4を生成し、親株のバクテリオシン耐性濃度の16倍濃度に耐性を示す。また、この時プラスミドpKE4Sのコピー数は増加する。

成果の活用面・留意点

  • SE-K4は熱安定性で弱酸性から中性域で安定に活性を発現し、低温性病原菌(Listeria monocytogenes)や酪酸菌の増殖を阻止するとともに高温下では枯草菌の増殖をも阻止する。これらのことから、本菌株は食品産業における製造工 程の雑菌汚染のみならず、流通・保管における腐敗防止への活用が期待できる。
  • 大腸菌等のグラム陰性菌には全く活性を示さない。

具体的データ

図1 プラスミドpES4SのSal I断片の遺伝子情報

 

図2 バクテリオシン高生産培養条件の組み合わせ(K-4株)

 

その他

  • 研究課題名:乳酸菌の生産する抗菌性物質の生成機構及び作用機序の解明
  • 予算区分:委託(乳酸菌抗菌性物質)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:大桃定洋、栗原光規、三森真琴、梶川博、田島清、緒方靖哉、土居克実、江口智子
  • 発表論文等:1) T. Eguchi et al. (2001) Biosci. Biotechnol. Biochem., 65(2): 247-253.