近赤外分析法によるリグニンを指標とした家畜糞発酵堆肥の迅速な品質判定

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

堆肥中に含まれるリグニン含量は、堆肥化過程において品質評価の指標となるBODと高い相関関係にあり,堆肥の品質評価の指標として有用な成分である。また、近赤外分析法によりリグニン含量は、高精度に分析が可能であり、主成分分析による品質判定もできる。

  • キーワード:豚糞堆肥、発酵品質評価、リグニン、近赤外分析、環境保全、家畜類
  • 担当:畜産草地研・畜産環境部・排泄物制御研究室
  • 連絡先:0298-38-8667
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

家畜排泄物には、各種有機質成分が含まれており、有機質肥料及び土壌改良資材として重要な資源であるが、その有効利用が図られていない。このこと は家畜排泄物を主原料にした堆肥の品質評価基準が明確に示されていないこともその一要因と考えられる。そこで家畜糞から調製される堆肥について、近赤外分 析法(NIRS)により堆肥の主要有機成分を迅速かつ高精度に分析する手法を開発し、これらの成分に基づく品質評価法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 肉豚糞を原料として調製した堆肥を発酵過程の1週間毎(7週まで)の切り返し時に採取した堆肥15点を供試した。リグニンはデタージェント法によ り、生物化学的酸素要求量(BOD)はクーロメーター法により分析し、リグニンとBODとの関連、NIRSによる堆肥風乾物におけるリグニンの迅速でしか も簡易な定量および品質判定の可能性を検討した。
  • リグニン含量は、堆肥化が進むに伴い増加し、4週経過後から一定の値を示し、BODは3週までは急激に酸素量が減少し、その後は緩慢な減少に移行した(図1)。 リグニン含量とBODとの間に相関係数が-0.977の高い相関が認められ、堆肥化過程で難分解性物質であるリグニンは、易分解性物質が分解され尽くした 時点以降、一定値を示し、BODはリグニン含量が一律な値を示し始めた時点辺りから、減少幅が緩慢になった。このことからリグニン含量が、堆肥の発酵程度 を示す指標となり得るものと考えられる。
  • NIRSによる堆肥中に含まれるリグニンの定量では、化学分析値と近赤外推定値との間に相関係数0.994、回帰推定からの標準誤差 0.39の高い精度が認められ(図2)、堆肥中のリグニンはNIRSにより定量可能である。
  • NIRSによる主成分分析により堆肥の発酵程度を判別できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 堆肥分析センター等における発酵品質の簡易評価法として有効である。
  • 堆肥原料および副資材の種類および割合の異なる試料群を収集し、さらなるデータ蓄積が必要である。
  • NIRSにおける試料の粉砕粒度は5mmメッシュを通過させたものを用いる。

具体的データ

図1.堆肥化過程におけるリグニンと BODの経時的な推移

 

図2.NIRSによる堆肥リグニンの推定

 

図3.NIRSにおける主成分分析を用いた発酵程度の判定

 

その他

  • 研究課題名:各種堆肥の品質評価技術の開発及び品質評価基準の策定
  • 予算区分:畜産エコ
  • 研究期間:2000~2004年度
  • 研究担当者:甘利雅拡、福本泰之、高田良三
  • 発表論文等:1) 甘利ら (2001) 日畜学会99大会講要 92.
                      2) Amari et al. (2001) 10th Inter. Confer. Near-Infrared Spectroscopy. Abstracts:P6-5.
                      3) Amari et al. (2001) Proc. 10th Inter. Confer. Near-Infrared Spectroscopy. UK