管状イオン交換膜を用いた豚舎排水の高度処理
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要約
管状イオン交換膜を用いた通電透析法で豚舎汚水活性汚泥処理水の高度処理を行うと、窒素・リン化合物を97 -99 %除去し、同時に着色度も低減化できる。
- キーワード:管状イオン交換膜、通電透析法、窒素・リン化合物、着色度
- 担当:農研機構・畜産草地研・畜産環境部・環境浄化研
- 連絡先:0298 -38 -8677
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
豚
舎尿汚水は主に活性汚泥法で処理されているが、処理水中にはまだ窒素・リンが含まれており、湖沼・河川の富栄養化や地下の硝酸塩汚染が懸念されている。間
欠曝気法などによって生物的にかなりの窒素・リンを除去することが可能だが、排水基準を満たす水質を得ることは困難な場合が多い。浄化処理水中の窒素・リ
ン化合物はその大部分がイオン化しているため、イオン交換膜を利用した通電透析法によって処理水中から窒素・リンを回収する事が可能である。本技術では管
状の陰イオン交換膜を使用し、豚尿汚水の活性汚泥処理から通電透析までの一連の処理実験システムを組み立て、長期連続運転によって、システムの処理能力を
検討した。
成果の内容・特徴
- 活性汚泥処理で得られた処理水(AT)を、管状イオン交換膜(EDコア、(株)トクヤマ、径6.1cm ×長さ45 cm )で通電透析処理するシステムを構築した(図1)。通電透析処理は0.1 A 定電流・滞留時間2日で行い、高度処理水(ED)を得るとともに、ATからの陰イオンを電極液中に回収した。
- システム運転期間中のAT、ED の水質変化について、
図2にNO3-N 、
図3にPO4 -P を
示す。AT からのNO3-N 、PO4-P 除去率は97-99 %と高い値を示し、EDの水質は排水基準を十分満たすものであった。
- 通電透析処理によってATから陰イオンが除去されるため、得られるEDのpH は11. 6 まで上昇した。このpH の値は放流基準(8.6
)を上回るため、中和処理が必要である。そこで二酸化炭素通気による中和試験を行った。試料80 mL に対し二酸化炭素を40
mL/分で通気したところ、約40 秒でpH が7 に中和された。
- システム運転期間中のAT とED の着色度の変化について
図4 に示す。
AT の着色度が平均値273 であるのに対し、ED の平均値は118 であった
(写真1)。窒素・リンの高度処理と同時に、脱色効果が期待できる。
成果の活用面・留意点
- 陰イオンを回収・濃縮した電極液の資源利用について検討する必要がある。
- 電気量を増やせば処理能力は向上するが、コスト増加にもつながるため、適正な電気量を検討する必要がある。
- 本システムでは除去対象を陰イオンに限定している。従って、アンモニウムイオンなどの陽イオンが存在する場合には前段の活性汚泥処理で十分に酸化して、硝酸イオンに変える必要がある。
- スケールアップに伴う経費増大を軽減するために、処理フローの最適化を含めたさらなる検討が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:豚舎尿汚水の高度処理と有用物質の回収
- 予算区分:微生物機能
- 研究期間:1999 -2001 年度
- 研究担当者:福本泰之、羽賀清典、花島 大、黒田和孝
- 発表論文等:1)福本ら(2001 )日本養豚学会誌38 (4)、p. 228.