牛の強放牧による強害雑草チカラシバの防除
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
チカラシバに侵入された荒廃草地に、放牧牛を3.4頭程度(成牛換算)/haの強放牧で、春から秋まで連続放牧することにより、3~5年で、チカラシバをほぼ完全に防除できる。この間に、シバの被度が拡大した場合にはその防除効果は特に顕著となる。
- キーワード:雑草、イネ科雑草、肉用牛、チカラシバ、シバ、荒廃草地、強放牧
- 担当:畜産草地研・放牧管理部・行動管理研究室
- 連絡先:0287-37-7245
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
チカラシバは日本全国に生育するイネ科の多年草で、堅くて強い茎は根元から直立して叢生し大きな株をつくる。8~10月には長さ10~20cmの
黒紫色の特徴的なブラシ状の穂をつけて、草地の景観をひどく悪化させるとともに、成熟種子は総苞毛によって動物などに付着して急速に拡散する。放牧牛は出
穂後のチカラシバをほとんど採食せず、さらに総苞毛が放牧牛の眼や鼻を痛めることから、西日本から北関東のチカラシバ蔓延草地ではその防除対策に苦慮して
いる。そこで、チカラシバ侵入荒廃草地の牛の管理的強放牧による植生改善条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
- チカラシバに侵入された荒廃草地の植生を改善するためには、放牧経験のある成牛を3.4頭程度/haの放牧強度で、4月中旬から10月初旬まで連続放牧することにより、3~5年で、チカラシバをほぼ完全に防除することが可能である(図1)。
- チカラシバの衰退に伴ってシバの被度が順調に拡大した場合には、チカラシバが再び勢力を盛り返す可能性は低いが(図1の牧区1~3)、顕著なシバの増植が認められない場合でも、放牧圧を常に高く維持することで(表1の牧区4)、チカラシバの再繁茂は抑制できる(図1の牧区4)。
- 放牧初年目にはチカラシバの草量が十分にあるので、放牧初年目の放牧強度を成牛換算で4頭程度/haに上げると、秋のチカラシバの出穂をより早く抑えることができる(図1、表1)。
- 放牧開始2年目にはオオチドメが優占し、現存量が極端に不足するために、放牧牛の増体はほとんど0になるが、この時期を乗り越えると、シバが急速に被度を拡大し、放牧牛の日増体も0.3kg程度を確保できる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 西日本から北関東までのチカラシバ侵入荒廃草地の生態的チカラシバ防除対策として利用できる。
- 放牧牛には過酷な放牧条件となるので、シバ型草地の放牧経験のある牛を用いることと、放牧期間中の放牧行動(横臥休息と反芻の有無)をこまめにチェックすることが必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:チカラシバ侵入荒廃草地の重放牧による植生改善条件の解明 1.チカラシバ抑制に効果的な放牧牛の放牧強度
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1997~2001年度
- 研究担当者:井村毅、須藤まどか、塚田英晴、山田明央
- 発表論文等:1)井村ら(1998)日草誌 44(別):330-331.
2)林・井村(1998)草地試ニュース 83:2.