妊娠早期の牛における血漿中エストロジェン濃度の推移
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要約
妊娠牛の末梢血中では授精後50日頃から受胎産物に由来するエストロンサルフェートの濃度が増加し始める。その濃度は単胎も双胎も同じ時期に上昇を開始するが、上昇率は双胎牛の方が高い。一方、他のエストロジェンは妊娠80日頃から上昇し始める。
- キーワード:牛、繁殖、体外受精胚移植、妊娠、エストロンサルフェート、双胎
- 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・繁殖技術研究室
- 連絡先:0287-37-7810
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
妊娠牛の末梢血中エストロンサルフェートは主に胎盤に由来しており、妊娠中後期にはその濃度が胎子の情報を知る手段として活用できることが知られ
ている。しかし、妊娠早期には濃度が低く、その出現時期や濃度推移は知られていなかった。そこで、高感度の測定法を開発し、妊娠早期における血中のエスト
ロンサルフェート濃度の測定を行った
成果の内容・特徴
- 人工授精により妊娠したホルスタイン種未経産牛5頭を供試し、排卵確認後30日まで5日間隔、30~80日は隔日、80~100日は再び5日間隔で採血を行い、血漿中のエストロン、エストラジオール-17βおよびエストロンサルフェートの濃度を測定した(図1)。
牛の末梢血中エストロジェン濃度は妊娠50日頃まで低値で推移し、妊娠による変化は認められなかった。50日以降まずエストロンサルフェートの濃度が他の
エストロジェンに先駆けて徐々に増加し、妊娠80日以降急激に上昇した。エストロンとエストラジオール-17βの濃度は妊娠80日以降上昇を開始したが、
80日以降の上昇率もエストロンサルフェートが最も高く、エストロンがそれに次ぎ、エストラジオール-17βの濃度が最も緩慢に上昇した。
- 体外受精胚移植により単胎および双胎妊娠したホルスタイン種経産牛をそれぞれ6頭ずつ供試し、移植(発情後7日)翌日から妊娠100日まで隔日の採血を行い、血漿中のエストロンサルフェートの濃度を測定した(図2)。
末梢血中のエストロンサルフェート濃度は、人工授精の場合と同様妊娠50日頃まで低値で推移し、その後徐々に上昇し、妊娠80日以降急激に上昇した。妊娠
50日以降の濃度は双胎妊娠牛の方が単胎牛より有意(P<0.05)に高く、妊娠時期と有意(P<0.001)な相関を示した。
成果の活用面・留意点
- エストロンサルフェート濃度の上昇パターンと妊娠時期および胎子数との相関が高いので、受胎産物の正常性や胎子数の診断に活用できる。
- 測定手法が煩雑であり、臨床的な応用にはさらなる測定法の改善が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:妊娠末期のクローン胎子の発育および分娩発来機構に関する研究
- 予算区分:体細胞クローン
- 研究期間:1999~2005年度
- 研究担当者:平子 誠、高橋 透、高橋ひとみ
- 発表論文等:平子ら (2000) Reprod. Fertil. Develop. 12(7,8):351-354.