妊娠末期に牛胎子から血液および羊水・尿膜水を連続的に採取できる
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要約
局所麻酔下で妊娠末期胎子にカテーテルを装着することにより、分娩直前まで連続的に胎子血液と羊水・尿膜水が採取できる。比較的長期にわたり測定した胎子血漿中のコルチゾール濃度は、分娩直前に増加する
- キーワード:妊娠末期牛、胎子血、羊水・尿膜水、カテーテル、局所麻酔、繁殖、肉用牛
- 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・繁殖技術研究室
- 連絡先:0287-37-7810
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
牛の周産期における免疫機構の発達や、機能の変化、胎子の栄養生理的変化および母子の内分泌相互関係を捉えるために、胎子血および羊水・尿膜水は
有用な研究試料である。しかし、屠畜時に胎子血を採取する従来の方法では、母子相互関係を追跡できない。そこで、比較的簡便に胎子血および羊水・尿膜水を
連続採取できる方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 妊娠末期牛6頭を用い、局所麻酔で立位のまま左けん部を切開した。子宮壁、尿膜、羊膜あるいは羊漿膜を切開し、胎子肢静脈にカテーテルを挿入した
後、カテーテル末端を皮膚外に出した状態で切開部を全て閉じた。胎子血管カテーテル(太さ5Fr.、長さ1.5m)は、糸掛け具を用いて胎子肢に固定した
(図1)。採血は、親牛、胎子とも手術日より毎日1回、分娩間際は複数回行った。全頭で7日以上、うち4頭で分娩直前まで採血可能であった。
- 羊水・尿膜水には、先端に異物の吸引防止具をつけたカテーテル(太さ14G,長さ 1.4m)を投入した。3頭で分娩まで完全に羊水・尿膜水を採取できた。
- 採取した胎子血液を測定することにより、妊娠末期の生理状態などの解析が可能であった。その1例として胎子血漿中コルチゾール濃度は、分娩約1週間前までは基底値で推移し、その後上昇し始め、娩出前後に最高値となり急激に低下した(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本手術方法は、牛の分娩末期の生理的変化を知る重要な手技となりうる。
- 胎子血管用カテーテルは血液の凝固による閉塞を防ぐため1日2回洗浄作業が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:「妊娠末期牛における胎子血液の連続採取技術の検討」
- 「放牧牛の分娩制御機構の解明に関する研究」
- 予算区分:場プロ・重点基礎
- 研究期間:1998~2000年度
- 研究担当者:青木真理、木村康二、平子 誠、花房泰子、石崎 宏、仮屋喜弘
- 発表論文等:1)青木ら (2000) 大動物胎子長期採血用留置カテーテル及びその使用方法(特許出願中)
2)青木ら (2000) 羊・尿膜水長期採血用留置カテーテル及びその使用方法(特許出願中)