産卵鶏の体組織および卵におけるダイオキシン類の濃度

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要約

産卵鶏の体組織および卵中のダイオキシン類の濃度を成長にあわせて調査したところ、飼料に微量に含まれるダイオキシン類は、脂肪組織に蓄積され、産卵が開始されると脂肪組織からダイオキシン類が卵に移行することが明らかとなった。

  • キーワード:ダイオキシン類、産卵鶏、体組織、卵、移行・蓄積
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・生体機構研究室
  • 連絡先:0298-38-8646
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

動物の内分泌機能をかく乱する作用のあるダイオキシン類が、食品を介してヒトを汚染することが危惧される。そこで、産卵鶏の成長に伴う体組織およ び卵中のダイオキシン類の濃度の変化を調査し、飼料に含まれているダイオキシン類が産卵鶏の体組織や卵へどのように移行・蓄積するか検討する。

成果の内容・特徴

  • 産卵鶏(白色レグホーン)を孵化時から462日齢まで通常に飼育した。供試鶏をブロイラー出荷日齢を想定した56日齢、産卵開始初期の184日齢 および産卵後期の462日齢にと殺して、筋肉、脂肪(腹腔内脂肪)ならびに肝臓と、と殺前1週間の卵を採材して給与飼料とともにダイオキシン類の濃度を求 めた。
  • 試料中のダイオキシン類の濃度をGC-MSで測定した。13種類のポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン類(PCDDs)、15種類のポリ塩化ジベ ンゾフラン類(PCDFs)と12種類のコプラナーポリ塩化ビフェニル類(Co-PCBs)のそれぞれの実測濃度に毒性等価係数を乗じて毒性等量 (TEQ)を得た。これらの毒性等量を合計して、ダイオキシン類の濃度とした。
  • 脂肪中のダイオキシン類の濃度(1.01~1.22pg-TEQ/g)は、筋肉(0.045~0.211pg-TEQ/g)、肝臓 (0.162~0.288pg-TEQ/g)および卵(0.129~0.135pg-TEQ/g)よりも高かったが、鶏の加齢に伴って、その濃度は大きく 変化しなかった。肝臓と筋肉中のダイオキシンの濃度は462日齢には増加した(それぞれ0.288および0.211pg-TEQ/g)。産卵初期の全卵と 後期の全卵のダイオキシン類の濃度には有意な差はなかった。(図1)
  • ダイオキシン類のうちCo-PCBの体組織と全卵における異性体の実測濃度構成比を調べたところ飼料における構成比と類似していた。PCDDsにおいては、飼料中の異性体実測濃度構成比が体組織と全卵のそれとやや異なることが観察された。(図2、3)
  • このように、飼料に含まれるダイオキシン類は、脂肪組織に最も多く蓄積され、産卵開始後、卵に移行することが明らかになった。また、飼料由来のダイオキシンの一部は体内であまり分解されないものと推察された。

成果の活用面・留意点

  • 産卵鶏体内へのダイオキシン類蓄積低減化をはかるための基礎情報となる。
  • 厚生省(2000)の食品中のダイオキシン類の濃度の調査結果では、国産鶏卵のダイオキシン類の濃度が0.079~0.158pg-TEQ/gで あり、国産鶏肉の濃度が0.021~0.294pg-TEQ/gであった。本研究の鶏卵および筋肉の値は、これらの調査結果の範囲に入るものであった。

具体的データ

図1 ダイオキシン類の濃度

 

図2 PCDDsの異性体構成比

 

図3 Co-PCBsの異性体構成比

 

その他

  • 研究課題名:ダイオキシン等内分泌かく乱物質が豚および家禽に及ぼす影響の実態解明
  • 予算区分:環境ホルモン
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:西村宏一、宮本 進、山岸規昭、武田隆夫、安藤幹男
  • 発表論文等:西村ら(2001)、家禽会誌38(春季大会号):12