植物に対して生理活性を有するエンドファイト産生新規物質

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要約

エンドファイト- Neotyphodium loliiはエルゴスタン骨格を有する5種のステロイドを産生する。これらのエルゴステロールおよびその関連化合物は幼植物の生長に影響を与えるが、その程度・方向性は植物の種類によって異なる。

  • キーワード:育種、牧草類、エンドファイト、Neotyphodium lolii、エルゴステロール
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種資源研究室
  • 連絡先:0287-37-7552
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

イネ科牧草に共生するエンドファイトはいくつかのアルカロイドを産生し、耐病虫性、耐乾燥性などの有用形質を宿主に付与することが知られている。 しかし、他にどのような物質を産生するかについては未知の部分が多い。本研究ではエンドファイト新規産生物質を単離同定すると共に、幼植物の生長阻害率に 対する影響を明らかにして、産生物質の基礎情報を得ることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • エンドファイト- Neotyphodium lolii培養菌糸より、エルゴスタン骨格を有する5種のステロイド(図1)、
    ergosterol(化合物1)
    5α,6α-epidioxyergosta-6,22-dien-3β-ol (化合物2)
    5α,6α-epidioxyergosta-6,9(11),22-trien-3β-ol (化合物3)
    ergosta-7,22-dien-3α,5α,6β-triol (化合物4)
    ergosta-7,22-dien-3β-ol (化合物5)
    を初めて単離・同定した。
  • 化合物1~化合物5 は、レタス発芽種子の生育に対して概ね阻害活性を示す傾向を有し、化合物1は他の化合物と比較して強い活性を示した。一方、宿主であるペレニアルライグラス幼植物の生育に対しては、概ね促進する傾向があることが明らかになった(図2)。

成果の活用面・留意点

  • エルゴステロール類は光や酸素により化学的分解反応が進行しやすいため、取扱いに注意を有する。
  • 化合物 2 は細菌増殖抑制活性が報告されており、宿主の耐病性に寄与している可能性がある。

具体的データ

図1. Neotyphodium loliiから単離・同定されたergosterolおよびその誘導体の構造(名称は本文参照)

 

図2. エルゴステロール関連化合物1~5のレタス及びペレニアルライグラスに対する影響

 

その他

  • 研究課題名:エンドファイトの産生物質の植物に対する影響の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:荒谷 博、蝦名真澄、小林 真、中川 仁
  • 発表論文等:1)Araya, H. et al.(2000)Molecular Breeding of Forage Crops 2000, Program and Book of Abstracts, 72.
                      2)Araya, H. et al., 2000 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies, Book of Abstracts, Agrochemistry 34.