イネ科牧草の発芽・定着促進への不織布の効果
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要約
不織布は表面播種された牧草種子の発芽・定着の促進効果に優れる。これは不織布が土壌水分を良好に保持し、種子を土壌表面に圧着することにより、発芽率が高まり、さらに土壌の固着力が大きな根貫入個体の割合が高まることによる。
- キーワード:栽培、牧草類、発芽、定着、不織布、表面播種、根貫入個体
- 担当:畜産草地研・放牧管理部・草地管理研究室
- 連絡先:0287-37-7808
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
浸 食などにより裸地化した草地の部分的な植生回復のために簡易草地更新法の一つとして、牧草の表面播種が行われているが、発芽・定着の悪さが指摘されている。その一対策として、近年開発が進んでいる不織布などの農業用被覆資材の表面播種への適用が考えられる。不織布は既に道路ノリ面等の一部の植生緑化に使われ、土壌の工事時の流亡防止、乾燥防止等の利点が上げられているが、不織布で覆われた種子の発芽動態は不明である。そこで、不織布が表面播種されたイネ科牧草種子の発芽や種子根の生育等に及ぼす効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 不織布(旭化成社製:長繊維不織布「ベンネット」、セルロース100%)は、土壌水分を良好に保持し(表1)、ペレニアルライグラス(品種:フレンド、Pe )及びオーチャードグラス(アキミドリ、Or )に対して、発芽率を高める(図2)。
- 不織布は、トールフェスク(ホクリョウ、Tf )及びオーチャードグラスに対して、種子を覆うことで土壌表面に種子を圧着し、また種子周囲の湿度を保つことによって、根鞘毛による種子の固定を助け、種子根が土壌に直接貫入する個体(根貫入個体、図1左)の発現率を高める。不織布のない条件では種子根が土壌表面を5mm 以上這う個体(根上り個体、図1右)の発現が多くなる(図2)。
- 根貫入個体は根上り個体より土壌固着力が優れ、不織布の効果のみられないシバと比べてオーチャードグラスでは初期生育が旺盛である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 浸食などにより裸地化した草地の簡易更新における牧草種子の表面播種による発芽・定着促進の基礎資料となる。
- イネ科牧草は葉先が剣先のため不織布を突き抜ける。また本試験で使用した不織布は戸外の利用では播種後約1 か月程度で消失する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:被覆資材下における牧草、シバの発芽、定着
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1998 ~2001 年度
- 研究担当者:梨木 守、大谷一郎、北川美弥、西田智子、尾上桐子
- 発表論文等:梨木ら(2001 )日草誌 47 巻(別):108-109 .